過去の拍手

□チャンスは案外近くにある
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こんにちは、私は試供品配りの女王です。



すいません。
調子乗りました。
ただの社員です。


今の気温は35度を越えたそうです。
そんな炎天下の中、馬鹿みたいに笑顔でアイスを配ってます。
何故って?
それはですね、私の会社、OKURAアイスクリームメーカーで新作のアイス『美味しさ日輪級、野菜アイス!〜弾けるオクラ味〜』の試供品を配る予定だったバイトの子達がみんな腹痛で休んだそうで、私たちがかり出されました。
多分昨日のバイト説明の時にこんな忠実にオクラの味を追及したアイスを食べたからみんなお腹を壊したんだと思います。
社員みんなで反対したのに社長が譲らなかったからこんなことになるんだ!


そんなこんなで始めたアイス配りだったが、この出来事が私の人生を大きく変えたのであった。







チャンスは案外近くにある






とりあえず、全部配らないことには終わらない。
私の目の前を通りすぎる人すべてに渡していこう。
この暑さだし、もらわない人はいないだろうしね。



『新作のアイスはいかがですか?』

真「佐助!アイスでござる!!」

猿「本当だ。この暑いなか嬉しいね」



ひっかかった。
さぁ来いイケメン達よ。
お前らがもらったら、周りの女の子たちももらいに来るだろう。



真「甘味でござるぞ!」

猿「本当に甘いもの好きだね旦那」



しかもお菓子好きさんとかありがたい。
アイスが好きならいくらでも持っていけ。
でもこれは甘くないよ。
忠実にオクラの味を再現したアイスだからね。



真「何味でござるか!?」

『オクラ味です』

猿「オクラ!?」



ナイスリアクションですねオレンジさん。
それが正しい反応です。



真「一つもらっても構わぬか?」

猿「え、もらっちゃうの?」

『はい!どうぞ!』

真「かたじけない!」

『そちらの方もどうぞ』

猿「いや、俺様は遠慮しとくよ」

『はいどうぞ』

猿「ちょ、え?」

『はい』

猿「だから、え?」

真「佐助!このお方に失礼だろ!」

猿「いや、どうみても早く終わらせたいだけじゃん!」

『溶けてしまいますからお早めにお召し上がりください』

真「感謝する!」

猿「ちょ、いつの間にかアイス握らされてるぅぅぅ!!」



そんなことを叫びながらイケメン達は消えていった。
よし。
あと少しで終わる。
頑張らなくては。



『アイスはいかがですか?』

前「お、いいね!」

『どうぞ!』

前「へ〜オクラのアイスなんてあるのかい」

『大ヒット間違いなしの新作ですよ』

前「にしても君可愛いね」

『は?』

前「アイスを配る姿は惚れ惚れするよ」



何この人。
初対面なんですけど。



前「どうだい?これからパーッと遊びに行かないかい?」

『困ります』

前「行かないのかい?」

『そんな寂しそうな顔をするならこれあげます』

前「ちょ、今もらった…」

『まだ足りませんか?じゃあもう三個あげます』

前「ちょ、ま」

『これからもご贔屓にー』



ポニーテールのイケメンは渋々帰っていった。
オクラアイスを手に五本持ちながら。



『アイスはいかがですか?』

政「ほー粋だね。この暑さの中でiceを配るとは」

片「確かに」



………。
なんか怖い方がいらっしゃいます。
なにこれ。
眼帯のイケメンと怖いイケメンが見てくるんですけど。



『ア、アイスはいかがですか?』

政「何味だ?」

『オクラになっております』

片「オクラ……だと?」



ひぃぃぃ。
なんか睨まれたぁぁぁ。
怖くて泣きそうだよぉぉぉ。
助けを求めるために周りを見渡したら、かすがちゃん全然配ってないし。
上杉部長とお花畑に行ってるんですけど。
ってか働いてるの私しかいなくない?
お市ちゃんは暑いからって日陰で長政さんとイチャイチャしてるし。
ってか働け長政。
お前がやるって言っちゃったからこの仕事を上杉部長が引き受けたんだけど。



片「おい小娘」

『は、はいぃぃぃ』

片「これは本当にオクラ味なんだな?」

『はい、そうでございます候ぅぅぅ』

政「おい小十郎、怯えさせてんぞ。すまねーなコイツは。vegetablesのことになると我を忘れちまうんだ」



なんか理解できないけど、この人達は危ないってことはわかった。
怖いイケメンは野菜アドレナリンが出ているんだね。
ってか野菜アドレナリンの人を見たら頬に傷がある。
え?
包丁とか刀とかで付けられてるみたいなんですけど。
え?
あれだよね。
包丁使ってたら手元が狂ったんだよね。
違うとか言ったら怒るからね眼帯のイケメンさん。
いや、聞かないけどさ。



『や、野菜ですか』

政「わらっちまうだろ」

『わ、笑いませんよ!野菜は体にいいですから!だから笑いませんからね!ひぃぃぃ!生意気言ってすいません野菜アドレナリンさん!』

政「お前大丈夫か!?」

片「おい小娘」

『ひぃぃぃ』

片「食べてもいいか」

『どうぞぉぉぉ!どんどん食べて大きくなってください!!』

政「怖がりすぎだろ。ってか、これ以上小十郎が大きくなったらどうするんだよ」



怖いよ怖い。
ってかなんで眼帯のイケメンさんは怖くないの?
ってか、アイスが激しく似合わないな野菜アドレナリンさん。
不味いって理由で殺されたら責任とれよ馬鹿毛利ぃぃぃ!



片「これは…?」

『メチャクチャ眉間に皺が寄ってます!不味かったらぺってしなさい!体に悪いですからぁぁぁ!』

政「vegetablesは体にいいって言ってたじゃねーかよ」

片「こりゃすげぇ……。まるで収穫したてのオクラを食べてるようだ」

『えぇぇぇ』

片「ここまで再現したか……。おい小娘、いつ葱味は発売する」

『ちょ、シリーズじゃないですから!』

片「あ?」

『善処しますから許してくださいぃぃぃ!!』

政「oh……小十郎の目が輝いてるぜ」




こうして私は脅されながら葱アイスを提案した。
コアなファンに大ヒットしたため、二年後、私はOKURAアイスクリームメーカーで野菜アイスシリーズの担当部長になるのであった。

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