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□神無月の夜に舞い降りた、赤と茶色のお尋ね者
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うふふふ。
はじめましてサンタです。
誰だ頭おかしいとか言ったヤツ。
後で体育館裏に来いよ。
っと、話がそれた。
私は見習いサンタです。
オジイサンじゃないからね!
ピチピチのお姉さまだからね!
ここ重要だからね!
サンタだからってオジイサンばかりじゃないんだからね!!
で、私はなんでか大きな御屋敷にいます。
しかもなんか完全に戦国時代だよ、これ。
え?
イジメ?
イジメよくない、カッコ悪い!!
ってか、真っ赤なスカートとか着て“サンタです!”なんて言ってみろ。
完全に殺されるって!
サンタだったママもパパも言ってたもん!
“あれはもう思い出したくない”って。
サンタなのに目が死んでたもん!
トナカイが死に物狂いで走り去ったからどうにか助かったって泣きながら語られたもん!
これ死ぬって。




神無月の夜に舞い降りた、赤と茶色のお尋ね者




『どうしようか…なんかいい案はないですか?トナカイの片倉さん』



隣でタバコを吸い茶色の全身タイツをまとい、頭に角を付けているトナカイの片倉さんの方を見た。
頬の傷は、3年連続セクシートナカイに選ばれた政宗にかなり前に付けられたらしい。
二人の過去には触れない。
だって空気読めるもん。



「俺の曾祖父が言っていたが、銃とか先が尖った鉄が沢山飛んできたと言っていた」

『ちょ、怖い!それ死ぬって!片倉さん避けれるの!?私、相手の欲しいモノを見抜く呪文と家の鍵を開けたり閉めたりする呪文、足音を消す呪文しか知らないからね?』

「護身術ぐらい学んどけ」

『乱闘を想定した授業なんてサンタ学科のカリキュラムには含まれていません』

「トナカイ学科には子供に見つかった時にどう気絶させるかの授業がある。少数ならばどうにか気絶させて逃げられるだろう」

『ちょ、トナカイ学科こわ!』



タバコを屋根の上の雪で消し、携帯灰皿に入れて屋敷を見渡す片倉さん。
そして私に目を移し、頭をナデナデしてきた。



「そんな不安そうな顔をするな。サンタは笑顔じゃなきゃいけねぇだろ」

『片倉、さん』

「俺の足を信頼しろ。本気で走れば新幹線級の速さぐらい簡単に出る」

『おま、乗ってる私のことを考えてくれ。それ、確実に首もげるからね』

「お前のパパンとママンはそれに耐えたんだよ」

『だからパパもママもむち打ちをあんなに怖がるんだ』

「お、誰かいんぞ」

『だれアレ』

「知るか」

『片倉さん冷たい!』

「冬だからな。背中に乗るか?俺の毛皮は温かいぞ」

『そういう冷たいじゃねーよ。しかも毛皮じゃなくてタイツだわ』



いつもクールな片倉さん。
ちょいちょいボケるのはわざとだよね?
天然とかじゃないよね?
とりあえず私をオンブして走らないでほしいな。
片倉さんの背中に乗ってプレゼントを配ってる私を見てパパもママも同級生も驚いてたもん。
できれば、ソリを使ってほしいな。
確かに温かいけど、なんかサンタじゃなくてただの親子になっちゃってるからね。
気付かないのは天然なのかな?



『片倉さん、そろそろソリを使ってほしいです』

「俺の背中じゃ不満なのか」

『温かいし片倉さんの背中は落ち着くけど、プレゼントを落としそうになるからできればソリを求む』

「俺はソリなんていう物に頼りたくはない」

『その発言で全サンタを敵に回したぞ』

「政宗様もソリを使わない。ならば政宗様の右目の俺も使わない。わかるだろ」

『1ミリもわからないね。しかも政宗はソリじゃなくて馬で、しかもサンタ免許を取得して1人で配ってるから』

「立派になられた…」



いきなり目頭を押さえ始めた片倉さん。
そっとハンカチを渡せば素直に受け取った。
とにかくまだまだクリスマスには時間がある。
戦国時代の方々に幸せになってもらうべく、私たちは作戦を立てることにし、こちらに気付いたオレンジヘアーの人を気絶させ、去ったのであった。



次回へ続く!


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