ネギまSS
□君の手
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「おはよー!せっちゃん♪」
「おはようございます。お嬢様」
いつもどおりの朝の挨拶。
のはずだった…
「せっちゃん、まだ疲れとるん?」
「ぇ…?」
いつもどおり振る舞っているつもりだった。
こういう時のお嬢様は鋭い。
右手に痛みが走る。
「いえ…お気にならさないでください。なんでもないですから」
「せやかて…」
「行きましょう!お嬢様。遅刻してしまいますよ!」
ぐいっと手を引く。
「わわっ!せっちゃん、待って〜な!!」
そのまま教室まで駆けていけば、何事もなかったかのように日常が始まる。
――あと少し。
最後の階段に差し掛かったところで頭上から声がした。
「刹那」
エヴァンジェリンさん。
と茶々丸さん。
昨日のことをよく知っている人。
――後生だから、余計なことを言わないで…
「あ、エヴァちゃん、茶々丸さん!おはよー!!」
「…おはようございます」
祈る思いで、お嬢様に続いて挨拶をする。
どうやら何も言ってこないようだ。
ホッとしながら、お嬢様の手を引き階段を上る。
が、すれ違いざまに肩を捕まれた。
「“右手”は、まだ痛むか?」
「へ? 右手って…?」
お嬢様が私の右手に目をやる。
急いで後ろに隠そうとしたが、お嬢様の手が邪魔をした。
「せっちゃん…これどうしたん?」
「―――っ!」
気がつくと私は、お嬢様の手を解いて一気に走りだしていた。
「あっ! せっちゃん!!」
呼び止めるお嬢様を振り切り屋上まで駆け上がる。
屋上につくと、空を仰いだ。
ばれてしまった…。
“右手”を日にかざす。