ネギまSS

□君の手
2ページ/8ページ

「おはよー!せっちゃん♪」

「おはようございます。お嬢様」


いつもどおりの朝の挨拶。
のはずだった…


「せっちゃん、まだ疲れとるん?」

「ぇ…?」


いつもどおり振る舞っているつもりだった。
こういう時のお嬢様は鋭い。
右手に痛みが走る。


「いえ…お気にならさないでください。なんでもないですから」

「せやかて…」

「行きましょう!お嬢様。遅刻してしまいますよ!」


ぐいっと手を引く。


「わわっ!せっちゃん、待って〜な!!」


そのまま教室まで駆けていけば、何事もなかったかのように日常が始まる。

――あと少し。

最後の階段に差し掛かったところで頭上から声がした。


「刹那」


エヴァンジェリンさん。
と茶々丸さん。
昨日のことをよく知っている人。

――後生だから、余計なことを言わないで…


「あ、エヴァちゃん、茶々丸さん!おはよー!!」

「…おはようございます」


祈る思いで、お嬢様に続いて挨拶をする。
どうやら何も言ってこないようだ。
ホッとしながら、お嬢様の手を引き階段を上る。
が、すれ違いざまに肩を捕まれた。


「“右手”は、まだ痛むか?」

「へ? 右手って…?」


お嬢様が私の右手に目をやる。
急いで後ろに隠そうとしたが、お嬢様の手が邪魔をした。


「せっちゃん…これどうしたん?」

「―――っ!」


気がつくと私は、お嬢様の手を解いて一気に走りだしていた。


「あっ! せっちゃん!!」


呼び止めるお嬢様を振り切り屋上まで駆け上がる。

屋上につくと、空を仰いだ。
ばれてしまった…。
“右手”を日にかざす。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ