short

□not reply
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「貴方は何時だって痛々しいわ」


吸い込まれる様な闇色を纏った男に言ってやった。
そう、貴方が黒を着るは喪に服しているから。
此の世の美しいものだけを集めて詰め込んだみたいな“彼女”の為に。


「そうやって彼女を想い続ければいいのよ」


長い髪を翻して、真っ直ぐに前を見つめていた彼女。
何の間違いも犯さなかった彼女の唯一の『間違い』として、彼女の唯一の『弱み』として。

男は何も言わないで、滅多にしない悲しそうな瞳で私を見ていた。

私、だけを。


その瞳の中に彼女を感じた。


「ねえ、彼女を愛してた?」


向き合った視線に欲しかったものは見つからなくて、もう呼吸が出来ない位こめかみがドクドクと脈打っていて、反らした先には爛々と輝く中庭が見えた。

晴れた休日はよく一緒に散歩をした。
空に漂う彼女の髪からはいつも良い匂いがしていて、とっても心地良かった。

 
「…ねえ、彼女は幸せだったと思う?」


笑ってブーケを投げていたね。
白のドレスで誰よりも綺麗だった。

少し膨らんだお腹を撫でては頻りにはにかんでたね。
二人の家には可愛らしい花がたくさん咲いていて、いつだって笑い合っていたね。



リリー、あなた幸せだった?




芝の蒼さも風の薫りも、日の温かさも変わらない此処で、
変わってしまったのは私かもしれない。
何一つ変わってなどいないのに。


もしも叶うなら、出逢いからやり直したい。
否、それよりももっと前、始めからやり直したいの。




それなら
今度は
もっと、上手に

 
 

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