short 3
□サイレン
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プチンと外れたホックの音に焦った
それはサイレン
あたしに危険を知らせてくれた
「こっ…じゅうろうさんっ?」
「何だ」
「いや何だじゃないですよ何やってんですかあんた」
「…チッ…大人しくしてろ」
「それ悪役の台詞!!」
あたしと小十郎さんはお友達だったはずではないか
あたしがいつまで経っても行動が子供じみている幼なじみの元親の愚痴を零して、小十郎さんが年甲斐もなくヤンチャしてる政宗の愚痴を零す
愚痴仲間でお茶会仲間だった
さっきまでは
環境が変わって勉強におわれている疲れから気付いたら居眠りをしていて、目が覚めたのがついさっき
目の前には小十郎さんが居て、背中に温かい感触がした次の瞬間、サイレンが鳴り響いた
引きつった笑顔で小十郎さんを宥めているあたしの頬に手を伸ばして、表情を変えないで小十郎さんは言った
「その顔を、歪めてみたくなった」
「…こ、じゅうろうさん…?」
「それだけだ」
先に歪んでしまったのは、あたしなのかそれとも彼だったのか
遅すぎたサイレンに、ただ泣いた