short 3

□ここに居させて
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乾いた風が吹き込む窓を眺めていた
この船に乗るほとんどの人間が体を鍛える為に鍛錬をしている

太陽の香りがする枕に右頬を埋めながら、彼の顔は、見られなかった


「熱中症だそうだ」


あたしの額に置かれたよく冷えたタオルを確認しながら大佐は言った
そのタオルはついさっきあなたが冷やしたばかりですよ、と言ってやりたかったが、生憎声を出す余力すらない


「運動不足の一般人がいきなり海兵と同じ訓練メニューこなそうとしたら、まあこうなるだろうな」


物が焼ける臭いがした後に大佐の葉巻の煙が私の顔の近くまで来て、窓から入る風に押し戻された


ひ弱な一般人は船に置いてはおけない
そう言ったのは、大佐だったじゃないか

麦わらの情報を持っているけれど、身元の分からないあたしを本部に送ったらいつ戻って来るか分からない
だから政府には報告せず、あたしの意志も丸ごと無視してこの船に乗せて
グランドラインに勝手にあたしを連れ込んだ

訓練は現代に暮らしていたあたしには当たり前にきつくて、辛くて、何度も止めたくなったけど、海兵と一緒に訓練するあたしを小馬鹿にした目で見る大佐にむかついて、意地だけで今日まで続けて来た

小娘がどこまで出来るのか楽しんでいるような目が、心配そうな目つきになったのは、いつからだっただろう


何も言わないあたしをじっと見てから、大佐はいつもの憎たらしい風に言った


「まあ、これからしばらくは部屋でじっとしてるんだな」


立ち上がろうとした大佐を、ようやく動いた指先で掴んだ
ほんの少し指が触れただけなのに、大佐は立ち上がろうとしたままで動きを止めた

今日初めて目を合わせた大佐は、酷く傷付いた顔をしていた
熱くなった頭では、それが何故なのか理解出来ない
 

「い、やで…す
くん…れん、した、い…です…」

「…そんな状態で出来ると思ってやがんのか?」


いいからもう寝ろ、と言って、今度こそ大佐はあたしの弱った手を優しく振り払った


「くん、れん、しない…と、ふねに、いられない、から…」

「…」

「つよく、なりま、す…だから、」


その先は言えなかった

あたしのベッドまで戻った大佐に瞼を無理矢理閉じさせられて、口にふわふわした何かが当たって息が苦しくなった
体の熱でくらくらしていたあたしは、そのまま意識を手放してしまった



この世界に存在する為に、強くなりたかった
それを、どうか奪わないで


 
 

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