short 3

□夢
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いつまでも涙は止まらないと思った
私の全ては消え失せたのだ
もう私には何も残ってはいないし、何も手に入らなくていい
涙を流したまま誰にも触れずそうっと死んでしまいたかった
心の温度に同調したように手足はもう氷のように冷え切ってますます私の心を凍えさせた
誰かに触れられればその熱さに私は焼け焦げて燃え尽きてしまうだろう
私の肩にゆっくりと触れた手に、消えるのならあの人に消してもらいたいのにと悲しい気持ちで振り向いた




「衛、士……?」

「…風邪ひくぞ」


くわえていた煙草を左手に持ち替えて、衛士は毛布を私の肩まで引き上げた
私は衛士のベッドに横たわっていて、少し開いた扉から入ってくる廊下の照明に目を細めた


「…泣いてたのか?」

「え…?」


そっと私の左目の下に指先を這わせた衛士が、少しだけ眉を寄せて言った

ああ、そうだ
私は夢をみていたらしい
恐ろしく現実的で、自分の体を投げ出してしまいたくなる真っ黒な夢だ


「変な夢をみたの」

「…ああ」

「衛士がね、死んでしまう夢」

「………」

「そんな事あるはずないのにね」


左目からそのまま頬に触れた衛士の右の手のひらにすり寄るように顔を寄せた
ひんやりとした衛士の指先の心地よさに目を閉じると、指先よりかすかに温かい唇が触れた


「…衛士?」

「そんな夢は忘れればいい」


もう一度、今度は啄むように唇を合わせて、凍えていた手も足も心も溶け始めた頃には、何も考えられなくなっていた
優しい瞳と見つめ合っていると、その瞳が少し辛そうに見えて今度は私から唇を奪った

 

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