short 3

□孤独の海上
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珍しく静かな夜だった


数日前までの荒れた海が嘘のように、航海は順調
航海士が言うには次の島には後二日程度で到着出来るらしい
次は恐らく春島か秋島
夏島のような焼け付く暑さは感じられないし、冬島のように雪がチラつく気配もない
起き上がった素肌の背中に少しだけヒヤリとした空気が触れた
ベッドに入れている脚は暖かいが、やはり裸では体が冷え切ってしまう
こちらに背中を向けたローが起きる様子はない
人の気配に敏い彼が眠ったままなのは私に心を許してくれたからなのか、私にローを殺す度胸なんかないと分かっているからなのか
その答えを知る術を私は持たない
知ったとして、私を待っているのは絶望だろう
それはこの夜の海に沈められるのとどこか似ていると思う
ローに愛される事などないと分かっていながらもローに抱かれる私を、彼はどう思っているのだろう
例え軽蔑されていようと、哀れまれていようと、私には止める事は出来ない
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