short 2

□ちょっと傷付いた
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「遊園地」



ベッドに仰向けに寝転びながら雑誌を読んでいた彼女は、いきなりそう言った。


「…何」

「行きたい、雲雀」

「ふうん」

「行きたいねー、雲雀」

「あの山本とかいう子と行きなよ」

「行、き、た、い、ねー、ひ、ば、り!」

「………」


彼女は強情だ。頑固とも言うのかな、一度言い出したら聞かない。
全く…年上とは思えない。


「僕はそんな群れの中には行かないよ」

「何でよ」

「咬み殺したくなる」

「あたしが一緒に行きたいって言っても?」

「関係ないよ」


そう言った瞬間、寝転んでいた筈の彼女は起き上がっていて、彼女が枕代わりにしていた真っ白なクッションが顔の真横に飛び込んで来た。


「帰れ」

「…呼んだのは君だよ」

「あっそ、もう嫌い」


眉を寄せて低くそう言って、不機嫌そうにしている。
読み終わったのか、さっきまで持っていた雑誌まで顔面目掛けて投げつけてくる。

 
「たかが学校の委員会でいっつも忙しいって言うしさ、家に行くのもダメって言うし、未だに名前すら呼んでくれないし?」


帰れと言う割に、まだブツブツと文句を続ける彼女。
苛立っているのか、ベッドのシーツを掴んで皺を作っている。


「あたし達付き合ってるんじゃないの!?」

「さぁ」

「…っもうほんと出てけ!!」


この一言に本当に切れたらしい彼女は、ついにベッドの上に置いたままだった通学用の鞄まで投げ出した。

それも難なく避けてやると、彼女は苛立った表情で、少し泣きたそうな目をしていた。

彼女は気付いていないみたいだから、面倒だけれど教えてあげなきゃいけない。


「君は僕にたくさんの事を求めるけど、君からは何も寄越さないよね」

「は?名前も呼ばないあんたよりはいっぱいあげてるよ」

「じゃあ言わせてもらうよ」


まだむすっとしている彼女の腕を引き寄せて、囁いて


「彼氏を家に呼んでおいて、相手もせずベッドで雑誌を読むって、どういうつもり?」


怒らせたいの? と聞けば驚いた顔のまま首を横に振った。







(…何にしても、嫌いはないと思うんだよね)


 
 

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