short 2

□こんな夜更けに君を想う
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気が付くともう真っ暗だった



「…終わったあ…!」


ずっと俯いていた体を思いっきり伸ばした。
骨が軋む音がして、それを合図に大あくび。
ランプに照らし出された書類の束を改めて見た。
我ながらよくやったと思う。


「へっへー、大佐め。私をナメるからこうなるのよ!」


大佐の執務室に呼び出されて、この大量の書類の処理を言いつけた時の大佐ったら酷かった。


『お前みてぇな亀みたいな奴だったら、終わるのは明日になっちまうかも知れねぇな。
そうならない様に励めよ?
寝不足だっつっても明日の仕事を手加減したりしねぇからな』


憎たらしい。
あの喋り方に腹が立って、絶対に今日中に終わらせてやろうと意気込んだ。
やっぱりその日中には終わらなかったけれど、まだ辺りは暗く静かだ。
これならしっかりと眠れるだろう。


「今持って行っても…大佐自分の部屋で寝てるかな」


この世界の人は眠るのが早い。
私が居た世界みたいにテレビがある訳じゃないし、当然の事だけれども、海軍もそうだとは。
 
体が資本だから、その日の日程を終えたら当番以外の人達はさっさと床に着いてしまう。
最初の内はなかなか寝付けなくて遅くまで本を読んでいたら苦情が来た。

その代わり朝は早く、起きれないでいると大佐に叱られた。
一緒に船に乗せてやっているのだから、殺されない程度には強くならないと困るのだそうだ。


「…トイレ行って寝よう」


今日は嫌な事を思い出す。
ただの一般人だった私が、いきなり海兵と同じメニューなんてこなせなくて、大佐に鼻で笑われたのだった。

あの人はやけに私に厳しい。
女だからナメられてるのかと思えば、たしぎ曹長の事はしっかりと認めているみたいだった。

邪険に扱われたと思えば、訓練中に倒れたら慌てた様子で医務室まで担いでくれるし。


「…ま、気にかけてくれてるのかな」


大佐なりに。


そこまで考えて、何だかおかしくなる。




こんな時間に、何で私は大佐の事ばかり想うのだろう。



 
 

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