マウンドのてっぺんで
□Chapter 4.
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まっさらな先発のマウンドを、渚は踏み均す。
一度、二度、土を自分にとっていい感じに均してから、目の前でミットを構える聖を見やる。
それから大きく振りかぶる。左腕をしならせると、自分の調子が良い時の、スピードボールがミットに音を立てて突き刺さった。
(よし、絶好調だ。)
あとは四球を出さなければ、試合を壊すことは無いだろう。
聖からボールを受け取った時、西強ベンチから視線を感じる。相手は見ずともわかっていた。
(兄、貴。)
小さい時は、一緒にキャッチボールをした。笑いあって、野球を教えて貰った。
いつからだろう。今の関係になったのは。
いや、いつからでも関係は無い。
(いつかはこうなってた。俺もアンタも、野球をする限りは、“敵”になってた。)
(だから今日は)
(アンタを、西強を、倒す。)
グッと、左手の中に収まる白いボールを握りしめる。
視線を聖へ戻すと、相手の一番が打席へと入っていた。
「プレイボール!」
審判の声が響き、サイレンが鳴った。