マウンドのてっぺんで
□Chapter 5.
1ページ/3ページ
県大会初戦の惨敗から1週間。
それは部活に、渚が向かわなくなったのと同じ期間だった。
聖は溜め息を吐きノートを机の中に仕舞い、椅子から立ち上がって教室を出る。向かうのは、2つ隣の1年7組。
――渚の、クラス。
「あ、六道さん。」
ドアの前に立つと、直ぐ近くの席からチームメートの中川が話し掛けてくる。
中川もまた、あの日から様子がおかしい渚を心配している。
中川は聖を見つけた時は顔が若干綻んだが、直ぐに首をふるふると横に振る。それだけで、聖には何なのか理解出来た。
「…また、授業が終わって直ぐにどこか行っちゃったよ。」
「……そう、か。」
そう。渚は授業後の休み時間、人を避けるかのようにどこかへと消えるのだ。
野球部員は完全に避けられ、クラスメートですら、まともに話せていない。
少し話をしたい聖からしたら、とても困る事態以外の何物でも無い。
中川に礼を言い、とりあえずこの1週間で唯一残した探し場所へ、向かうことにした。