マウンドのてっぺんで

□Chapter 7.
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 倉岡が復帰してから2週間。
 一応、罰として倉岡は走らされたのだけど、なにもみずきは投げ込みまで禁止していない。
 それでも倉岡は、自身で2週間の投げ込みを禁じていた。
 ただ黙々と走り込み、ストレッチをして、それ以外には野手の練習で汗を流す。
 本人は「ピッチャーは辞めねえよ」と言っていたから大丈夫なのだろう。あの日以来、笑顔がたまに見られるようになった。
 甲子園大会は部員全員が、授業の時間に無理を言って講義室で見た。
 どのチームも投打に優れていたが、やはり頭一つ抜きん出た西強高校が高校野球の頂点に立った。
 倉岡嘉久は全6試合で30打数の25安打7本塁打と圧倒的だった。
 豪快さと繊細さを兼ね備えた打撃。それを見て、わたしは思わず身震いをした。
 ただ、倉岡がそれを見ても以前のように顔色を悪くせず、特に気にしていない様子なのは、有り難かった。


 「来年は、俺らの番だな。」


 倉岡の呟きに、わたしは小さく頷いた。
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