小説(SKET DANCE)
□恋するチョコレート
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「…」
バレンタイン当日
1人だけ部室に早くきたヒメコは、3つのチョコを並べ難しい顔をしていた。
1つはスイッチへ。
もう1つはボッスン。
そして…
「はぁ…」
大きなため息をついた。
チョコレートを買いに行くまでは、どこか意識的に自分の気持ちに気づかないようにしていたが、きゃっきゃと恋バナに花を咲かせる女の子たちに混ざりチョコレートを選んでいると、嫌でも『気になる』人のことを考えてしまう。
アイツが現れるまでは、自分の中ではボッスンのことが気になる存在と思ってた。
だから敢えて気づかないようにしていた。
でもチョコを手に取った時、異性として脳裏に浮かんだ人物はボッスンではなく…加藤希里だった。
そこでハッキリと自分の気持ちに気づいてしまったのだ。
「いつからやろ…」
ヒメコはゴロっとソファに寝っ転がり、これまでの出来事を思い出す。
―出会いは影狼事件。
はじめはイケメンだけど生意気な1年生だという印象、だけど自分より強い彼に興味を持った。
それから昔助けたことがあった奴だとわかり、似た者同士だということも知った。助けたいと思った。
何かと話す機会が増えいくけれど特に状況は変わらなくて、そのうち轡の事件が起こった。
事件後、椿のおかげで希里は少しずつ周囲に打ち解けてきた、アタシがボッスンに助けられたように。
「…ま、アタシはなんも出来てへんけど」
雪合戦での希里の一言はすごく嬉しくて、
(あぁ、アタシと同じなんや)って考えたら自然と笑みが溢れてしまった。
それと同時に滑って転びそうになり希里に抱きかかえられたシーンもよみがえる。
ボッ…
一度意識をし出すと希里のしっかりした腕の感触や息づかいまで思い出し火がついたようにヒメコの顔が赤くなった。
(あ…あの時はなんとも感じなかったのに…///)
しばらく1人で悶えていたヒメコだったが、
「あーもう、考えててもしゃーないなっ」
ソファから起き上がると2つのチョコに「バレンタイン義理(笑)」とメモを残し部室を出ようとした。
と、その瞬間、ガラッと勢いよくドアが開き見覚えのある大柄な男が飛び込んできた。