小説(SKET DANCE)
□年下の男の子
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ある日のお昼休み。
校舎の端にある使われていない教室。
「あ、探したで!加藤希里!」
「…またアンタか、鬼姫」
あの日…影浪事件以来ヒメコはことあるごとに希里に絡んでいた。
忍者の末裔というだけでも十分気になるが、これまで自分より強い男性に出会ったことがなかったヒメコは希里に興味津々といった感じなのだ。
それともうひとつ。
彼の排他的な雰囲気が過去の自分と重なって、なんとなく放っておけないという気持ちもあった。
「なに、アンタいつも1人でこないなトコにおるん?」
積み上げられた机にもたれかかり、コンビニのパンをかじっていた希里の隣にヒメコは腰をおろした。
「栄養偏るで」
「お前には関係ないだろ」
「なっ、お前て…アタシはアンタよりも先輩やろが!」
「先輩らしく振る舞ってもらった覚えはないな」
「なんやとコラ!加藤希里!ほんま生意気な1年坊主やなっ」
「嫌なら来なきゃいいだろ」
…一瞬の間。
ヒメコは大きな瞳をパチクリさせて希里をみた。
(たしかに)
「…ま、そやんな」
「…」
(ほんまアタシなんでこんなコイツに絡んどるんやろ?)
「アタシも物好きやんなぁ?」
「そうだろうな」
怒りだすかと思えば考え込み、急にニカっと笑い出すヒメコの百面相にふっと希里の表情が和らぐ。
(あ、コイツこんな顔して笑うんか)
「今な、ボッスンもスイッチもチュウさんに呼ばれてて暇しとってん。ちょっと位ここにおってもええやろ?」
「…別にいーけど」
それから2人はたわいもない話をした。
8割はヒメコが一方的に喋っていたが、希里は意外にもヒメコの話をちゃんと聞き受け答えもした。
いつの間にか時間は過ぎ、キーンコーンと予鈴がなる。
「ほな行くわ、またな加藤希里!」
ヒメコが立ち上がろうとした瞬間、希里がヒメコの腕をつかんだ。