小説(SKET DANCE)
□キミの温もりー中編ー
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「……コ」
「…」
「…ヒメコ!」
「ん…」
目を覚ますと、ヒメコの目の前には見慣れた家のドアがあった。
「家か…寝てもうたんやな、ごめんな、ボッスン」
「いんや、下りられるか?」
「うん…」
屈んだボッスンの背中からゆっくりと下りるが、寝起きのせいもあって少し足元が覚束ない。
「ダイジョブか?」
「うん、ありがとな…」
ヒメコの体を支えながら心配そうに様子を伺うボッスンに精一杯の笑顔を向ける。
その言葉に安心し、ヒメコを支えていた手をそっと離すとボッスンは片手をあげてニッと笑い返した。
「ほんじゃ、ちゃんと暖かくして寝ろよ」
「わかっとるわ」
「ハハッほんと可愛いげねーの」
「…」
ボッスンが笑いながら背中を向ける。
その背中を見つめていたヒメコは胸の奥がチクリと痛むのを感じた。
(あたし、ホンマに可愛くないんやなぁ)
「んじゃ、オヤスミ〜」
「おぉ…」
…じゃり。
ボッスンが来た道を引き返すように歩き出す。
(…)
ヒメコは、先程まで自分をおんぶしてくれていた温かなボッスンの背中を見つめる。
(……行かないで…)
「!」
気がづくとヒメコはボッスンのパーカーの裾をつかんでいた。驚いたボッスンが振り返る。
「どした?!」
「あ…ぇ?…ぇえと」
思わず口ごもる。
(何やっとるんやろアタシ…)
ボッスンは黙ってヒメコの言動を待った。ヒメコは目線をふせたまま遠慮がちに口を開く。
「うち…今日誰もおらんねん」
「…」
「せやから…心細いやんか」
(こんなんボッスン困らせるだけや…)
「!」
熱と恥ずかしさとで赤くなっているヒメコの頭をポンポンとボッスンは優しく撫でた。
「仕方ねぇな」
恐る恐るヒメコが顔をあげると、少し赤らんだ顔のボッスンが明後日の方向をみながら答えた。
「ぇ…?」
「お前が寝るまで、一緒にいてやるよ」
「ボッスン…」
「ほら、早く鍵出せよ」
照れ隠しからかは両手を頭の後ろで組み、ボッスンは口を尖らせてヒメコを急かした。