小説(SKET DANCE)
□保健室の誘惑
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「…ってぇ…」
「ホンマもう人前だと鈍くさいんやな、アンタ」
夕方の保健室。
教職員会議があるとかで保健の先生の姿はなく、そこには額に手をあてベッドに座る希里と手当をするヒメコの2人がいた。
ほんの15分程前ー
生徒会の仕事を終えた希里が帰路についていたところ、野球部のこぼれ球が飛んできて額に命中。たまたま部活帰りのヒメコが現場を目撃し、お節介にも保健室に引っ張って行ったのだ。
「んー、オキシドールはこれかいな?」
「だから…大丈夫だっつってんだろ。俺に構うな。」
「そんな血ィだらだら流してる奴の言う台詞かいな」
「ふん…」
「可愛ないな。…ちょっと染みるで」
ヒメコは左手で希里の前髪をあげ、右手に持ったピンセットで傷口を消毒する。
「…っ」
「はいはい、我慢なぁ」
「子供扱いすんじゃねー」
「はいはい、アタシに助けてもらったんは誰かなぁ?」
「…」
希里は先日のやりとりを思い出す。
(喋りすぎたか…)
希里はヒメコに助けられた過去の出来事からか、自分の境遇に似ているからか、唯一ヒメコには気を許しているように見える。(byボッスン)
「なんや急に大人しなって」
「…」
「ん、そんな傷は深くないみたいやな」
傷口を覗き込むようにヒメコが近づくと、ふんわりと優しいシャンプーの香りが希里の鼻をかすめた。
思わず見上げた希里のすぐ近くにヒメコの顔。
「…」
希里の手がヒメコの腰に回り、ぐっと引き寄せる。バランスを崩したヒメコは希里の膝に座るような恰好になった。
「な…?ん」
チュ。
一瞬、希里の唇がヒメコの唇に触れた。
「う…ぇ?」
「…」
「ぇ…今何したん?」
「キスした。」
「なに…!!んっむぐぅ」
顔を真っ赤にして怒りだしたヒメコの口を希里の大きな手が抑えながら耳元で囁く。
「こんなトコ誰かに見られたらまずいんじゃねーの?」
「!!」
男女が2人、誰もいない保健室のベッドでくっついていたら誰もがその仲を疑うだろう。
ヒメコがこっくりと頷くと希里はようやく手を離した。