小説(SKET DANCE)
□不器用に優しくてー前編ー
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「はぁ…」
毎月やってくるツキノモノ。
下腹部に鈍痛を感じながら過ごす1日はかなり辛い。
ましてホルモンバランスも悪くなるので不安定になったりイライラしたりしてしまうのだ。
(せやのにコイツ等は…)
「おぉい、ヒメコ〜なに辛気くせー顔してんだよ」
『やや…もしや例の忍者君とナニか?』
「えぇ!?何ソレっ?そーゆぅ事?」
(はぁ…怒る気力も出んわ…)
男子側も悪気はないのだが、一生経験することがない痛みが故に女の子のソレに気づかないケースがほとんどなのである。
ボッスンもスイッチもいつもとは違うヒメコの様子には全く気づいていないようだった。
(ホンマにもう…)
ヒメコはさらにため息をつくと席を立った。
「…ちょっと外まわってくるわ」
「おー、いってらっさい」
『気をつけてな』
ヒメコの苦悩も虚しく、2人はすでにモモカの新作DVD鑑賞に夢中になっていた。
****
「う〜ん…」
(外に出るとは言ったものの、寒いしお腹もさっきより痛なってきたな…)
下腹部を押さえながら少し前屈み気味で歩いていると、ヒメコの目の前にフッと大きな人影があらわれた。
「!?」
ヒメコが視線をあげると、そこには背の高い仏頂面の男が立っていた。
「おぅ、加藤希里か」
「…」
黙ってこちらを見ている希里にヒメコは首を傾げる。
「どした…」
「腹痛いのか?」
「!」
思いがけない出会いと意外な言葉にヒメコは驚いた。心なしか希里の顔はヒメコを心配をしているようにも見える。
「ん…ちょっとな」
「…辛いんならどっかで休めよ。」
「あ…うん、ありがとうな」
「…」
「…」
「…向こう」
「?」
「ベンチ空いてる」
希里に促されるように人気のない裏庭のベンチに座る。
「…座ると楽やわ」
「…」
希里は立ったまましばらくヒメコの様子を伺う。
秋の肌寒さにヒメコが無意識で手をさすると、希里は着ていた上着を脱ぎヒメコの背中からかけた。
「…!」
ヒメコが希里の方を見ると一瞬だけ目が合ったが、すぐに希里は黙って校舎の方へと歩いて行ってしまった。
「アイツ…」
ヒメコは希里が去っていった方を見つめ、ほのかに頬を染める。
希里の温もりを体と心に感じながら…