小説(SKET DANCE)
□不器用に優しくてー中編ー
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キーンコーン…
昼休みのチャイムがなり、校内が一気にざわめく。
「よっしゃ〜ヒメコ!飯食おうぜっ」
ガタガタと机を寄せはじめるボッスン。
「あ、うん。ちょっと先に食うてて」
「どこ行くんだよ?」
「ちょっと借りもん返しにいかなアカンねん」
「ん、あそ。じゃ先食ってる」
「うん、ごめんな」
ヒメコは机の脇にかけていた紙袋を持つと教室を出て1年3組に向かった。
(早く行かないと。アイツすぐにどっか行きそうやし…)
希里に上着を借りたのは先週。
お腹の痛みがおさまった後に上着を返そうと希里を探したが、すでに学校に希里の姿はなかった。
そのためヒメコはそのまま上着を家に持ち帰り、休みの間に洗濯とアイロンがけをしておいたのだった。
(三連休やったから返すの遅なってもうたな…)
足早に歩く。
(アイツの上着…えー匂いしたな。香水でもつこてんのかな…)
ヒメコは無意識にぎゅっと紙袋を抱えた。
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教室の前では担任らしき教師と男子生徒が話していた。
ヒメコが2人の横を通りすぎようとした時に会話が聞こえ思わず立ち止まる。
「お前、加藤の家と近かったな?」
「はい。クラスは違いましたけど一応同じ中学なんで…」
「悪いんだけどこのプリント帰りに渡しておいてくれないか?」
(加藤…?希里のことか?)
「あ…の」
「?」
「加藤希里…くんに用事があったんですけど…」
「あぁ、アイツ今日は風邪で休んでるんだ」
「え!」
(風邪…まさかあの日寒かったから…)
ヒメコは一瞬考え込み、担任に話しかけた。
「あ、そのプリントもし良かったらアタシ届けたりますよ」
「本当か?」
「中学めっちゃ近くて多分近所やと思うんで」
「そうか、じゃあ悪いんだけど頼むよ」
「ハィ」
(きっとアタシに上着貸したせいで風邪引いたんやろなぁ…)
ヒメコは希里の同級生という男子生徒に住所を聞くと自分の教室に戻っていった。