小説(SKET DANCE)
□思春期未満お断り!
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「ヒメコは…」
「…」
ボッスンは一瞬迷ったような顔をするも言葉を続ける。
「オレのことどう思ってんの?」
「え…」
しばらくの沈黙。
ざわざわざわっと、木々のざわめく音だけが部屋にひびく。
「どうって…どういう意味?」
「…オレは」
ドキドキと互いの鼓動が早まり、視線が交差する。
「ヒメコが好きだ」
「…っ!」
その言葉を聞いた瞬間、驚きと動揺でヒメコの頬はさらに紅潮する。大きな潤んだ瞳はまっすぐにボッスンを捉えた。
「ボッスン…」
「…」
ヒメコの肩を掴むボッスンの手に力がこもる。
ぎゅっとヒメコもボッスンの服を掴み、見つめ合う2人の距離が言葉を交わすことなく徐々に近づく。
お互いが目を閉じ、唇が触れる寸前…
「おーい、お前ら。倉庫の片付け終わったかァ?」
「!!」
「!!!」
ガラッ…と、ドアが開くタイミングと同時に、ドンッ!とヒメコはボッスンを力いっぱい突き飛ばした。
「わあぁっ、なっ、チ…チュウさん!片付けなら終わったで?あはは」
「??…そうか、助かったよ」
慌てるヒメコを怪訝な顔つきで見ていた中馬先生は端で静かに横たわるボッスンを見つけ
「どうしたんだ?ボッスンは…」
「あ、いや、暑いから床で寝ると冷たいとか…」
「そうか」
ボッスンが横たわるすぐそばの壁に大きなヒビが入っていることはあえて指摘せず、中馬先生はじゃあなと部屋を出ていった。
「今日は心臓に悪い日やな…」
****
夕陽がさす帰り道。
無言で並んで帰るボッスンとヒメコ。
「…」
「…」
「…なんか、今日はえらい疲れたわ」
「…」
「ボッスン?」
ボッスンが急に止まりヒメコの方を向く。差し出されるボッスンの手。
「手出せよ」
「あ…、うん」
ヒメコがそっと出した手をにぎりボッスンはまた歩きだす。
(ボッスンの手って大きくてあったかいんやな)
「…今度さ」
「…?」
「うちに遊びにこいよ…さっきの…お前の答え聞いてねぇし」
ズンズンと先を歩くボッスンの髪からのぞく耳がほのかに紅いのを見て、ヒメコは微笑みながら返事をする。
「うん!」
夕陽に向かい歩く2つの影は、長く長く1つに重なっていった。