小説(SKET DANCE)

□不器用に優しくてー中編ー
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最終授業を終えると、ヒメコはボッスンとスイッチに部活を休むことを伝え、まっすぐに希里の家に向かった。

希里の家はヒメコの中学からも近く、歩いていると中学の時によく通ったパン屋の前を通った。


「うわ、めっちゃ懐かし」

そんなノスタルジックな感覚を覚えつつ住宅街に入り、入り組んだ道をしばらく進むと1軒の古びたアパートを見つけた。


カンカンカン…


階段を上るとヒメコのヒールの音が響く。


(ここか…)


標札は出てないものの、先ほどの男子生徒に聞いた部屋番号がドアにあった。


「ゴホン…」


若干の緊張をはらうように咳ばらいをして、チャイムを押すとピンポンと短い音がなる。


「…」


しばらくしても応答はない。今度は軽くドアをノックしてみる。


「あの…加藤さんのお宅ですかー?」


ノックにも返答がないためヒメコが呼び掛けてみるとガチャリとドアが開き、黒いパーカーとスウェット姿の希里が少し驚いた表情で出てきた。


「!…何の用だ?」
「えーと…アンタの担任からプリント預かって」
「それだけのために?…スケット団の仕事でか?」
「いや、アタシ個人で…これ返したかったし」


ヒメコが紙袋を渡す。


「…」


希里は黙って受け取ると、紙袋の中に綺麗にたたまれた上着と小さくラッピングされた包みを見つけた。


「あ、それは今出さんでも…」


ヒメコの顔がうっすらと赤くなる。


「クッキーか」
「えーと…まぁ、三連休ヒマやったから焼いてん」
「へぇ、意外だな」


希里の表情が和らぐ。


「その…上着ありがとうな」
「あぁ、もう大丈夫なのか?」
「あ、うん。もう平気や。でもアンタ…風邪引いたんやろ?」
「…別に上着のせいじゃねぇよ」
「そうなん?」
「ちょっとダルいだけだし…」
「なんや!?ズル休みかいな」
「念には念をだ」


なんやソレ!とヒメコが笑い出すのと同時に冷たい風がピューっと吹いた。


「…くしゅん」


ヒメコが小さなくしゃみをすると希里がドアを大きく開けた。


「とりあえず入れよ」
「!!…親とかおらへんの?」
「1人暮らしだから」
「…そか」
「ちょっと汚ねーけど」
「…それはかまへんけど…」


ヒメコはドキドキと早まる鼓動を感じながら希里の部屋に入った。
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