いち

□M←FQ
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走り去っていくクイックの後ろ姿をじっと見つめる

ああ、終わったんだ。

不思議なぐらい冷静にそう思った。


「追わないのか」


いつの間にいたのか、メタルは俺の前へと歩み寄って問いかけてきた。


「ああ」

「どうして」

「意味ないだろ」

「なんだ、お前の気持ちはそんなものだったのか…そんなんだから逃げられるんだよ、中途半端な気持ちじゃ…−−!」


メタルの言葉の棘が、ぐさりと一番柔らかい部分へ刺さりこむ。

痛い。

それと同時に吐き出された言葉への怒りが込み上げ、肩を掴み壁へ叩きつける


「てめぇに…俺の何がわかる。」

「わかるわけない」

「んなら適当なこと言ってんじゃねぇ!!俺は!!」


その言葉の次が喉にひっかかり、出てこない


「嫌いなんじゃないか」

「違う」

「なら何故、続きを言わない」

「っ−!…愛してる…愛してるさ誰よりも!!でもッ−−っ!」


パシリ、

言葉を言い終わる前に頬を叩かれ途切れる

驚いてメタルに目をむけると、酷く怒りを孕んだ瞳の色でこちらを見つめていた


「だったら追うのが道理だろう!!いつまでうじうじしているんだ、見ているこっちが腹立たしいッッ!!」


ここまで怒りをあらわにしているメタルは初めて見た。

ひりひりと痛む頬がやたらリアルなのに、目の前にいるメタルはまるで別次元のようにリアリティがないように感じた。


「め、た…?」

「いけ!!早くいけよ!!好きなんだろう!?愛してるんだろう!?だったら走れっ…行ってくれ…っ」

「おい、メタル!?」


俯き涙を零すメタルに手をのばし肩に触れると、ビクリと揺れ手を叩かれた


「俺に構っている隙なんかあったらさっさと追え馬鹿者っ」

「…メタル、」

「好きなんだろ?」

「っ…ああ、」

「だったら行け、」


涙を拭い、無理矢理笑って見せるメタルに、チクリ、と胸が痛む。

なおも俺はメタルに触れようと手を伸ばすが、やんわりと俺を拒絶する。

いたたまれなくて、辛くて、

メタルに背を押される。


マスクを外し、行け。と音もなく唇が形作る。


「ごめん、ごめんっ…」


俺は熱くなる喉を強く締めて、その場を走り出す。


本当の気持ちに気付いてしまったんだ。

でも気付いた時にもう遅くて、すべて終わっていた。


今すぐその手をとり、抱きしめたい。


それでも俺は、クイックの後をおって
好きだ、なんて上辺の言葉を呟き、ずっと演技を続けるんだ。


自嘲して震える声で呟く。


ごめんなさい、愛してしまいました。


ああ、視界を霞ませるこの水は一体、




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