毛探偵

□愚直は欠点であり美点でもある
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「―――――庵さんって、彼女いた事あるでしょ?」

何やら難しい表情でルナと戯れていた圭が、突然口を開いた。庵は不意を突かれて一瞬鍋をかき回す手を止めて圭を見たが、すぐに持ち直して頷く。

「あー、まあな。学生の頃とか、それなりに……」

 庵は答えながら、圭が恋愛絡みの話を言い出すのは珍しいと思い、目を瞬かせた。圭は庵の戸惑いに気にするどころではないのか、眉を寄せた難しい顔のままだ。その手は集中してるように、一心不乱にルナを撫でている。

「自分から告白した?」
「圭、お前どうした?」
「いいから!」
「……二回ぐらいかな」

 庵が観念したように言うと、圭はさらに問い詰めるように庵に質問を重ねる。

「ライバルとかいなかったの?」
「ライバル?いたかもしんねーけど、俺は知らなかったな」
「そう……」

 途端に声に覇気を無くす圭に、庵はピンときてニヤニヤと笑いながら火を止め、圭に近づいた。圭の隣に寄ると、茶化すような口調で庵が指摘する。

「圭、お前……好きな子が出来たんだな?」
「んー……」
「それで、ライバルもいるってわけか」
「……マジでどうしよ」

 圭は否定もせず、弱気にため息を吐く。ルナを撫でる手さえ止めて、圭は膝を抱えてしまった。その姿を見た庵は、自然と励ます様な声音になる。

「何だよ、頑張れって。そんな強敵なのか?」
「強敵も強敵だよ。多いし濃いし、俺じゃ太刀打ちしきれないって言うか……」
「何だそりゃ」
「とにかくもう敵が多いの!そんで強烈なんだよ!」
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