小説

□君のために・・・
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ここはアカディア。
能力をもった人々が住まう都である。
女神テイアが加護するこの都には人々が心を癒す場として住んでいた。

第一話『心』


―静かな水の中に俺はいる―


とても静かで暗い水の中。
とても広いが、俺はここが窮屈に感じる。
誰もいない俺だけの世界。
音のないこの世界は、ただ静かに時間だけが流れていく。
そして俺は静かに眠りについた・・・

目が覚めるとそこは見知らぬ世界だった。
いつものように暗くはなく、いきなり光のある世界に出たせいかまぶしくさえ感じる。
(ここは・・・どこだ・・・?)
そう思いながらたちあがると、目の前に女の子が一人、ジィーと俺を見ている。
「なぜ俺をそんなに見ているんだ?」
そう問いかけると女の子は俺にいきなり抱きついた。
「貴方が法皇なのねっ!?私、ルミナっていうの!」
興味津々なそのまなざしは俺を見つめている。
(法皇ってなんだ?俺を法皇と呼んでいるのか?)
「俺は法皇なんて名前ではない!俺の名前は-・・・」
名前は-・・・と続けるが出てこない。
そう、俺には名前がないのだ。
「あら、法皇っていうのは気にいらない?じゃあそうね-・・・ウォルス、ウォルスはどう?
「俺が・・・ウォルス・・・?」
「うん、ウォルス!これからよろしくねっ♪」
勝手に決めるなよ・・・と思いながらも頷く。
そうして俺はルミナから名前をもらった。

俺が新しい世界に来てからルミナと遊んだり料理をしてみたりといろいろなことをした。
その間にルミナからいろいろなことを聞いた。
俺はタロットカードから産まれたことと、ルミナが大きくなったらルミナを守るナイトになること。
そして最後に聞いたのが・・・戦闘ペットの話。
タロットカードから召喚されたものは全て戦闘ペットだということを聞いた。
俺もタロットカードから生まれたので戦闘ペットだということだ。
「戦闘ペットは旅の相方なんだよっ!」そう元気良く笑うルミナに、俺は小さな微笑みを返した。
そう、俺は人間ではなく戦闘ペットなのだ。
ルミナにつくし、ルミナを守るためだけに産まれてきた。
それを俺は受け止め、ルミナを守ることを心に誓った。



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