短編

□おやすみ
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「あー…もう2時…」


会社から持ち帰ってきた仕事を一通り終わらせて顔を上げれば、眠そうな顔の快彦を寝室におくってからすでに2時間以上が経っていた。
平日はいつも朝早くから仕事があるため早寝早起きで規則正しい生活の快彦。
それに比べて、私はいつも寝る時間がまちまちだからこんな風に、快彦がベッドに入ってしばらくしてから私がベッドに入るなんてことも珍しくはない。
私もそろそろ寝ようと、リビングの電気を消して寝室へ向かった。

寝室の扉を開ければ、薄暗い中に、寝息をたてて気持ち良さそうに眠っている快彦の姿。
近づいて顔を覗き込んだら、口を開けてあまりにもアホ面で眠っているもんから思わず笑ってしまった。

ダブルベッドのど真ん中で眠っている快彦を少し横にずらして、空いたところに私が潜り込んだ。
快彦は、私に背中を向けている。
その背中にくっついて眠ろうとしたら、彼は私の存在に気が付いたらしく目を覚ましてしまった。


「あっ…ごめん、起こしちゃったね」

「いや、だいじょーぶ」


快彦は眠たそうな顔で私の方に寝返りをうって、うっすらと開けた目で枕元の時計を見た。


「にじ…」

「うん、2時」

「ずっと仕事してたの?」

「そうだよ」

「大変だね、お疲れ様」

「大変じゃないよ、好きでやってるんだから」


私がそう言うと、快彦はそっか、と言って、私に腕枕をしてくれた。
私の頭の下にある腕とは逆の腕を私の背中にまわしたから、抱き着かれているような形になる。
快彦がこうやって時々してくれる腕枕はものすごく落ち着く。
もちろん、彼が近いっていう事もあるだろうけど、それ以上に、彼の愛情が感じられるような気がして、それがたとえ気のせいでもずっとこうして彼の体温を感じていたいと思えるんだ。


「おやすみ、菜奈美」


頭の上から言葉が降ってきて、それから数秒すれば、すぐに寝息が聞こえてきた。
相変わらず寝つきだけは良いんだから、なんて思いながら、私も、愛しい人の胸の中で、小さな声で同じ言葉を呟いた。





おやすみ
















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