短編

□GUILTY
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「じゃあ、私帰るから…」

「送るよ、駅まで」


荒い息を整えた菜奈美はベッドからおりると、床に落ちている衣類を1つ1つ身につけていった。
その行動を、そんな行動さえも、綺麗だななんて見とれながら、俺もゆっくり体を起こした。


「何でもいいから俺の服取って、タンスの2段目」

「いつものパーカーとかでいいの?」

「んー。あと、下着も」

「分かってる。3段目でしょ?はい」


ぽす、とベッドの上に俺の服が落ちた。

俺が服を着ている間、菜奈美は鏡を見ながら来たときと同じように綺麗にメイクと髪を整えた。
仕上げは、いつもと同じ。
淡いピンクの口紅と、左手の薬指で輝く銀色の指輪。
最近になってから、この指輪が彼女の指にはまることが俺らの“おしまい”の合図になっていた。

夢の時間はおしまい。俺と彼女が、現実に帰る時間がやってきた。


「菜奈美、次、いつ会える?」

「…分からない」


この会話だって聞き飽きた。
「分からない」と言うことで、君は2人で犯している「罪」から逃げているつもりなんだろうけど。

もう今さら、逃げられない。


「やっぱいいよ、今日は送ってくれなくて」

「分かった」

「…それじゃあ、」


またね、准一。

泣きそうな声でそう呟き、君は部屋を出ていった。





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