短編

□職員室前第2物品室
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「…すっかり常連になったな、***」


月曜日の昼休み、生活指導の先生に呼ばれ職員室前の物品室に行ってみると、先生は本棚に寄り掛かり、私…というか、私の髪型やらメイクやらスカートやらを睨みつけた。


「何回校則を破ったら気が済むんだ」

「…うっさい」


私が挑発的な言葉をぶつければ、先生は舌打ちをして私に近付いてきた。
むかつくなあこのオッサン、なんて思いながら、私はため息をついて目を逸らす。
すると先生は、「今日は岡田先生に説教してもらうからな」と言った。

途端に変わる、私の顔色。
青くなった訳じゃない。多分今の私の顔は真っ赤。
だけど先生はそんな私を見て焦っていると思ったらしく、楽しそうに笑ってる。
やっばいなあ…何言われるかな、准くんに。

すると、物品室の扉が開きスーツ姿の彼が入ってきた。
 

「ああ、岡田先生。***はあなたのクラスの生徒ですよね?困るなあ、ちゃんと指導してもらわなきゃ」

「すいません…しっかり言い付けておきます」


彼がそう言うと、先生は部屋を出て行った。
ばたん、と扉が閉まり、部屋には准くんと私の2人っきり。
気まずくて顔を上げられずにいると、彼はため息をついて私の方に向かって歩いてきた。


「…菜奈美、」

「はい」


私の視界で彼の足が止まった。


「この間散々言ったやろ?学校ではそんな格好するなって」

「…ごめん」

「彼氏に言われても直す気になれへん?」

「だって…」

「だって?」

「可愛く、なりたいし、さ、」


私は、准くんの機嫌を伺うようにさりげなく顔を上げてみた。
ああ、明らかに怒った顔だよ、この顔は。きっと教師としてじゃなく、彼氏として怒ってるんだろうけど。


「菜奈美はまだガキやろ」

「がっ…ガキって!」

「化粧なんて似合う歳になったらすればいいんやから」

「けど髪染めるくらい良いじゃん!」

「黒髪だって十分似合ってる」

「スカート丈、この学校の規則だと長すぎるもん…」
 
「あのなあ…」


准くんがため息をついた、と思ったら、私の体はあっという間に准くんの腕の中。
そして、吐息まじりの声で、耳元で囁かれた。


「誰の事誘ってんの?」

「さっ…誘ってなんか!てか離して、誰か来ちゃう!」

「大丈夫、扉に立入禁止って紙はっといたから」


何で変なとこ準備万端なんだろう。
よく分かんないけど、とりあえず誰かに見られたら駄目だと思い、准くんの胸を押して離れようとしたけど、どんなに強く押したって離そうとしてくれない。


「なあ…もしかして、男子生徒誘ってんの?こんな足出して。ダメな子やなあ」


離すどころか、私の足を触りはじめた。
一気に恥ずかしくなり、身動き取れなくなる。


「誘って、なんか…」

「じゃあ、俺のこと誘ってる?」

「違うっ…」

「…ふうん」


准くんは、私の体を少しだけ離した。
そして、だんだん彼の顔が近付いてくる。
キスされる、と思って、ぎゅっと目をつむった瞬間、廊下の方から昼休みの終わりを告げるチャイムの音が聞こえた。

思わず目を開くと、准くんと至近距離で目が合ってしまい、恥ずかしくなって准くんの胸を軽く押したら、今度はすんなり離してくれた。
 
 
「…放課後、またここに来て下さい、***さん」


いつの間にか准くん…岡田先生の言葉も関西弁から標準語に、しかも敬語に戻っている。
 

「放課後…またお説教?」

「お説教というよりお仕置きに近いですねえ」

「!!」

「それから、」


部屋を出ていこうとしていた岡田先生は一度足を止めて振り返った。


「またこうして僕と学校で話したいなら、明日からもその格好で来たらどうですか?」


出ていく間際、にやっと笑った彼の顔に、私は完全ノックアウト。その場にしゃがみ込んだ。

まだ、もうしばらくの間、私の校則違反は止められそうにありません。





職員室前第2物品室







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