短編

□屋上MAGIC
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水曜日の五限目。
一番眠いんだよね、この時間の授業が。
しかも一番窓側の席なもんだから太陽の光が心地好いし、おじいちゃん先生の声がまるで子守唄みたいで、うとうとしてきてしまった。

ああ、このまま眠れるなあ、なんて思っていたら、こん、と私の机の上に小さい消しゴムが飛んできた。
飛んできた方向を目で辿り斜め後ろを見ると、同じく眠そうな顔をした森田が、頬杖をついて私をじっと見つめていた。
特別仲が良い奴ではないし、時々話をする程度の奴。
そいつが、私に口パクで「ねむいね」なんて言っている。
苦笑いしながら私も「ねむいね」と返すと、森田は辺りを見渡してからノートをちぎってそこに何かを書き込み、それを丸めてさっきの消しゴムと同様、私の方に投げてきた。
紙には、「ばっくれようぜ!」と書いてある。
ばっくれる…って、授業抜け出すってこと?え、私と?


「先生!」


私が内容を理解するより先に、森田はすでに行動に出ていた。


「***さんが体調悪いみたいなんで、俺保健室連れてってやっていいですか?」

「何だ、それなら***だけでいいだろ」

「いや、***さんがどうしても俺と一緒じゃなきゃだめだって…」

「ちょっ、森田!」


何言ってんのよ!と小声で森田に言うと、森田は私の腕を掴み、さっさと教室を後にしてしまった。
後ろから先生の私たちを呼ぶ声が聞こえるけど、森田はそんなのお構いなしにどんどん廊下を進んでいき、廊下の角を曲がった所で私の手を離し、立ち止まった。
森田に掴まれていたところが微かに熱をおびている気がしたのは、多分、気のせいだろうけど。


「授業終わるまであと40分か…ドコ行く?」

「…結構強引だね、森田って」

「あ?そうか?」

「うん、だいぶ」


私がそう言って笑うと、森田も八重歯を見せるようににいっと笑い、


「屋上でも行くか!」


と、また私の腕を引っ張って階段を駆け上がっていった。

その笑顔と強引さにどきりとしてしまったのは、
多分、気のせいじゃない。




屋上MAGIC






 

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