短編

□これは愛じゃない
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「ねえ、」


愛してるよ。

そう言って、あなたは私を抱きしめた。
けど、違う。あなたが見ているのは、あなたが愛しているのは、私じゃないでしょう?
その証拠に、あなたは私の名前を呼ばない。呼んだことがない。
あなたが私越しに見ているのは私のお姉ちゃんでしょう?
全部、分かってるよ。


「愛してるよ…」


誰を?
私を?お姉ちゃんを?それとも、作り笑いでお姉ちゃんの代わりを演じる、惨めな恋人の妹を?


「…昌行、」


私は普段、あなたを昌行なんて呼ばない。
だけど今だけ、お姉ちゃんが呼んでた名前で呼んで、お姉ちゃんを演じてあげる。


「昌行、私も愛してる」

「…静奈、もう、どこにも行かないで」


昌は、お姉ちゃんが死んだ事、理解してるの?
もう帰ってこないって、分かってるの?
ひょっとして、分かってるから私と付き合ったの?
お姉ちゃんに良く似た私で、その隙間を埋めてるの?


 「静奈…」


良いよ、それでいい。私の名前じゃなくていい。
昌がここに居てくれるなら、私は何者にだってなれるんだ。







これは愛じゃない









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