短編

□I love all of U
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「ねー菜奈美ー、」


こっちこっち、と手招きする快彦の傍に駆け寄ると、快彦の足の間に座らされ、ぎゅっと抱きしめられた。


「何、どうしたのよ」

「どうもしなあい」


今日は甘えたい日なんだね。
そう言って頭を撫でてあげると、快彦が、私に懐いた猫の様に見えてくる。
気が済んだのか、抱きしめる力を緩めて私の背中に押し付けていた顔を離し私の肩に顎を乗せる。
それがくすぐったくて、思わず、ふふ、と笑ってしまった。


「菜奈美ー、」

「なあに」

「何かリクエストちょうだい」

「何のリクエスト?」

「何か歌いたいから曲のリクエスト」

「んー…あ、 “逢いたくて”が良いな」


私がそう言うと、快彦は小さな声でリクエストした歌を口ずさみはじめた。
柔らかく透き通った彼の声が優しく私の耳元にかかり心地好い。
この時間がずっと続けば良いのにと半ば本気で思っている自分がいる。


「この時間がさ、ずーっと続けば良いのにね」


一通り歌い終えた快彦がぽつりと呟いた。
あれ、私の思ってたこと快彦にばれちゃった。
そんなことを思いながらそうだね、と呟いてゆっくりと目を閉じた。





I love all of U














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