短編

□ずっとあなたと
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 何でかな。
 こうして、彼にぎゅっとされてると
 心が落ち着く。


 「…博くん、」

 「なあに?」

 「博くんはさ、
  何か偉大な力でも持ってるの?」

 「…ん?(笑)」


 何言ってるの菜奈美ちゃん、
 と笑いながら私の頭を撫でてくれて、
 それだけの事なのに
 ささやかな幸せを感じてしまう。

 その大きな体に体重を預けると、
 彼はさらに強く、でも優しく、
 私を抱きしめなおした。


 「…菜奈美、」

 「んー?」

 「……何でもないや、やっぱ」

 「え、何それ
  そういうの一番気になる」

 「言わなくても菜奈美に
  伝わってるだろうからいいの」

 「…ひろしくん」

 「なに?」

 「何でもないっ」

 「ふふ、うん(笑)」

 「…だいすき」

 「何でもないんじゃなかったの?(笑)」

 「だいすきなのーっ!」

 「はいはい」


 博くんは、俺もだよ、
 なんて耳元で囁きながら
 また、頭を撫でてくれた。

 ああ、どうしよう。
 私今幸せすぎる。


 「…あのさ、菜奈美」

 「なに?」

 「………」

 「また、やっぱいいやとか
  ナシだからね?」

 「あのさあ、」


 突然、真剣な顔をした博くんが
 私から体を離し、まっすぐ私を見た。

 突然どうしたんだろう、なんて
 こちらも身構えてしまう。


 「な…何でしょう」


 すると、博くんは真剣な表情で、
 でも少しだけ微笑んで、こう続けた。


 「俺と結婚してくれませんか?」


 その言葉がどんな意味なのか
 理解するのに少し時間がかかったが、
 その間ずっと博くんは
 まっすぐ私の目を見ていてくれた。

 ようやく頭で理解して、
 涙が溢れそうになる。


 「私で…いいの…?」

 「俺は菜奈美がいい。
  菜奈美とずっと一緒にいたい。
  …菜奈美は?」


 そう言われて、迷わず
 「私も博くんがいい!」というと、
 博くんは笑って、私をまた、
 強く抱きしめてくれた。





ずっとあなたと
















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