これまで俺たち6人が歩んできた20年という月日を表現するには、俺の持っている言葉じゃ足りない。
ありがとうとか、そういうありきたりな言葉は、薄っぺらく思えてしまって。
何だろう、この気持ちは、何と言えば伝わるんだろう。


「なに、岡田難しい顔して」


音響さんにピンマイクを付けてもらってるいのっちが、俺の顔を見て笑った。あぁ、今日もいのっちは素敵な笑顔。その笑顔に、俺は何度救われただろう。

ヘアメイクさんに髪を触られてたり、衣装さんがネクタイの結び目を整えていたり。メンバーそれぞれが、色んなスタッフさんに囲まれて収録に臨む準備をする中、俺はその様子を一歩下がって眺めていた。


「岡田、お前準備ちゃんと済んだのか」

「え、ああうん」

「本当か?髪直してもらえ、少し崩れてるぞ」


坂本くんがスタッフさんに声をかけると、すぐにメイクさんが飛んできて俺の髪型を直し始めた。
坂本くんはよく気がつく。いつだって周りを見ている人で、いつだって俺たちの事を、見ててくれている人。


「岡田、スーツきつそうだねぇ。腕上がるの?それ」

「ん?上がるよ?」


ムキムキだなぁ〜すごいなぁ〜なんて笑う長野くんは、優しく笑いながら俺の腕に触れる。
優しさで溢れた彼は、いつだってブレなくて。ただ甘やかすんじゃなくて、心の底から、俺たちを思ってくれている、芯のある優しさ。


「岡田はさぁ、そろそろ俺の事くらい担げちゃうんじゃない?」

「ああ、そうかもね」

「えぇ〜やだよ俺!怖い怖い!落ちるのやだもん!俺らの下はトニセンじゃなきゃね」


楽しそうに笑う健くんの笑顔は、20年前のまま。メンバーを心から信頼した言葉には、20年前以上に深さがあるけど。

剛くんもそんな健くんを見て、楽しそうに笑ってる。しょうがねぇなぁこいつ、っていう、これまた心からの優しい笑顔で。あぁ、彼には笑顔がよく似合う。


俺たちのまわりに集まっていたスタッフさん達がバタバタと離れていき、収録があと数分で始まる事を告げるディレクターの声が、セットの向こうから聞こえる。

セット裏で、6人が立ち位置に立った。6人横並びに。
坂本くん、長野くん、井ノ原くん、剛くん、健くん、俺。
この6人で肩を並べてから、いつの間にか20年経っていた。
あっという間だったかと聞かれたら、そんな事はない。かといって、長かったかと聞かれたら、それもどうだろう。

30秒前。スタッフが声を張り、観覧席の歓声が、わっと大きくなる。


「あのさ、」


横にいる5人にだけ聞こえるくらいの大きさで、声をかける。
なんだよ、どうした、と返してくるみんなの声を、そちらを向かないまま耳に入れる。
あ、声かけたのはいいものの、何て言おう。ありがとう?違う。これからもよろしく?ありきたりだ。

10秒前。拍手と歓声。俺たちの登場を楽しみにしてくれてる人たちがいる。


「…あのさ、」


5秒、4、3、2、


「行こう」


歓声がさらに大きくなる。セットが開き、向こうから当てられた眩しいくらいのスポットライトで、一気に視界が真っ白になる。
これはあと数秒すれば目が慣れて、光で染まった真っ白な世界から、沢山の笑顔と、カメラと、キラキラの世界に変わるんだ。

行こう、この6人で。
足並み揃えて、光の向こうの世界へ、これからもずっと。










thank you for V6!!!
20th anniversary
2015.11.01






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