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□片隅からの再会
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あの日…
両親と一緒に行ったゲルテナという人の美術展で、私は不思議な格好をした男の人と出会った。
ううん。
出会ったといっても、ちょっとだけお話をした。それだけだった。
大きなバラをモチーフにしたっていう像。
…確か、あの人が読んでくれたっけ。
うん、そう。
「せいしんのぐげんか」
って言ってた気がするの。
…え?
なんでこんなお話するのって?
…分からないの。
あの男の人のこと、知らないはずなのにもう一度会いたいって思ってて、でも、誰もその人のこと、知らないから…誰かに話して、そしたらすっきりするかな、って思ったの。
ごめんね、こんな話して…
あれ?そういえば私、誰に話しかけてたんだっけ…
まだだよ。
まだ早いんだ。
もう少し待ってて、
きっと…彼に会えるから。
ね、イヴ。