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□ようこそ、ゲルテナの世界へ
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「フンフフ〜ン♪」
ここはゲルテナの作り出した美術作品たちの世界。
名は「絵空事の世界」という。
この世界では美術品たちは命を持ち、動くことが出来る。
時には外から人を招き入れて「歓迎会」を行うことがあるが、ある少女だけはその「歓迎会」があまり好きではなかった。
彼女の名は「メアリー」。
ゲルテナの生涯最後の作品である彼女は、その幼さゆえか、ひとつの美術品としての好奇心からか、外の世界へのあこがれが強く、いつも外の世界へ行くことを夢見ていた。
そう、彼らが来たあの日までは…
「イ〜ヴ!ギャリー!あ〜そぼ!」
まるで深い海の底のような色合いの部屋の中には、ワイングラスの縁を斜めにカットしたようなオブシェ、「ワインソファ」。
と、そのソファに腰かけて眠る一人の少女と一人の青年の姿。
二人ともまるで生気のない顔色をしているが、それでもメアリーの声が部屋に響くと閉じていた目を開いた。
「ふふ、今日は何して遊ぼうか?鬼ごっこは昨日やったし、お絵かきも飽きちゃったね。おままごとは?…おままごとしよっか!」
イヴと呼ばれた少女も、ギャリーと呼ばれた青年も一言だって話してはいないのに、メアリーはとても楽しそうに一人、話をする。
「…あ、そういえば今日はみんなが「お客様」を呼ぶんだって。もう来てるのかな?」
「みんな張り切ってるんだ〜。だって、久しぶりのお客様だもの。」
「…え?イヴたちも参加したいの?」
「出来るかな〜?…でもおままごとよりは面白そうね!」
海の底のような部屋の中、楽しげに話すメアリーの声だけがその場には響いていた。
イヴとギャリーは石像のように動かないままだが、メアリーは気にした様子などなく何かを思いついたようにおもむろに立ち上がって二人に笑顔を向ける。
「それじゃあ私たちも行きましょう?私たちなりの「おもてなし」をしなくちゃね!」
楽しげなメアリーの声に合わせるように、部屋の入り口にいた赤い目の人形が笑った。