Heaven's Lost Property

□The_Sinking
1ページ/7ページ





時は放課後。場所は通学路。



天神は、守形と一緒に商店街に向かっていた。何とも珍しい組み合わせだが、両者とも嫌なわけではないらしい。



『あ〜……、だりぃ。せんぱ〜い、何か飲むもんありません?』



「フム、残念ながら持ち合わせていないな」



『まぁ期待してなかったけど』


「………、」



『嘘ですよ、先輩』



時折、冗談なども入れ混ざって、比較的楽しく雑談をしていた。



何故こうなったかかというと。学校を出る時、春原は急いで家に帰ってしまったのだ。智樹とそはらも早々にどこかへ行ってしまったし。なら独りで帰ろう。そう思い、下駄箱を出たところで守形と出会い、今に至る。



つまるところ、別に理由はない。成り行きとも言う。




『しっかし、抽選券ですか』



「二枚貰ってしまったんだ。それに、期限はどうやら今日までらしい。暇潰しがてら行ってみようかと思ってな」



『なるほどなるほど。でも抽選券って良いですよねぇ。ドキドキ、ワクワク。みたいな感じがあって――』



「そうか? なら一枚やろう。俺はあまり興味がないんでな」



『いいんですか?』



天神の言葉に守形は、ああ、とだけ呟いた。天神は、ありがとうございます、とお礼を言う。



順調に、という表現は些か適切かどうかはかりかねるが、道を進み、商店街へとたどり着いた。



抽選券片手に、抽選会場を探すことにした。



すると前方から、カラン♪カラン♪ と景気のいい音が聞こえた。どうやら何かが当たったらしい。



その人の背中はよく見たことのある背中で、智樹とそはらのものだった。



『二人でこれをやりに来てたのかぁ』



抽選で当たる賞品を眺める。天神は、うんうん と二回頷く。



『そりゃあ、そはらも必死になるわ』



「フム、一等は日帰り海旅行か。なかなか興味深いな」



『確かに、そそられるものはありますわな』



少し離れた距離でも見える大きさで、一等 日帰り海旅行!! と書いてあった。



智樹とそはらの二人は、徐々に近づく天神と守形に気付く気配がない。とは言え、二人きりの時間を奪うようなマネはしたくない。


故にコッソリ。とまではいかないが、視界には入らないように抽選会場に近づく。



『オーオー、ご機嫌だなぁ』



「それだけ嬉しかったのだろうな」



さて。と守形が抽選券を商店街のおっちゃんに渡した。くじの取っ手を掴み、回した。



『いやぁ〜……、智樹も満更じゃねぇんだろうなぁ。アイツらは―――』



言いかけて、先程聞いた景気のいい音が鳴り響いた。



はれ? と振り返る。



「おーおーあーたーりー」



『すげぇ! 何普通に当ててんすか!?』



「一等。ペア日帰り海旅行でこざいまーす!」



「いや…、まさかな」



完全に予想外。青天の霹靂とでも言うのだろうか。多分違うが、そういう言葉を使うくらいなのだ。



智樹達を見てみれば、二人(主にそはら)は固まっていた。



「ん?」



それに気付いた守形はそう言うしかなかった。



そして再び、



「おーおーあーたーりー」



一等が当たった。何なのか分からない。ギャグなのだろうか。というか、一等は一体何個あるのだろう。



しかし、守形と天神。この二人が連続で当たった理由はむしろわかりやすい。単純に確率が高くなっていただけ。



その原因を作ったのは、外ならぬそはらだ。そはらは余りにも多くの抽選券を使った。まぁ、それだけなのだが。



「………、」



そはらの視線が痛い。いや、気のせいかもしれない。だからこそ、言わせてもらおう。





『ん?』 「ん?」




この時、天神と守形の息は一寸のぶれなく合わさった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ