Heaven's Lost Property
□The_Sinking
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時は放課後。場所は通学路。
天神は、守形と一緒に商店街に向かっていた。何とも珍しい組み合わせだが、両者とも嫌なわけではないらしい。
『あ〜……、だりぃ。せんぱ〜い、何か飲むもんありません?』
「フム、残念ながら持ち合わせていないな」
『まぁ期待してなかったけど』
「………、」
『嘘ですよ、先輩』
時折、冗談なども入れ混ざって、比較的楽しく雑談をしていた。
何故こうなったかかというと。学校を出る時、春原は急いで家に帰ってしまったのだ。智樹とそはらも早々にどこかへ行ってしまったし。なら独りで帰ろう。そう思い、下駄箱を出たところで守形と出会い、今に至る。
つまるところ、別に理由はない。成り行きとも言う。
『しっかし、抽選券ですか』
「二枚貰ってしまったんだ。それに、期限はどうやら今日までらしい。暇潰しがてら行ってみようかと思ってな」
『なるほどなるほど。でも抽選券って良いですよねぇ。ドキドキ、ワクワク。みたいな感じがあって――』
「そうか? なら一枚やろう。俺はあまり興味がないんでな」
『いいんですか?』
天神の言葉に守形は、ああ、とだけ呟いた。天神は、ありがとうございます、とお礼を言う。
順調に、という表現は些か適切かどうかはかりかねるが、道を進み、商店街へとたどり着いた。
抽選券片手に、抽選会場を探すことにした。
すると前方から、カラン♪カラン♪ と景気のいい音が聞こえた。どうやら何かが当たったらしい。
その人の背中はよく見たことのある背中で、智樹とそはらのものだった。
『二人でこれをやりに来てたのかぁ』
抽選で当たる賞品を眺める。天神は、うんうん と二回頷く。
『そりゃあ、そはらも必死になるわ』
「フム、一等は日帰り海旅行か。なかなか興味深いな」
『確かに、そそられるものはありますわな』
少し離れた距離でも見える大きさで、一等 日帰り海旅行!! と書いてあった。
智樹とそはらの二人は、徐々に近づく天神と守形に気付く気配がない。とは言え、二人きりの時間を奪うようなマネはしたくない。
故にコッソリ。とまではいかないが、視界には入らないように抽選会場に近づく。
『オーオー、ご機嫌だなぁ』
「それだけ嬉しかったのだろうな」
さて。と守形が抽選券を商店街のおっちゃんに渡した。くじの取っ手を掴み、回した。
『いやぁ〜……、智樹も満更じゃねぇんだろうなぁ。アイツらは―――』
言いかけて、先程聞いた景気のいい音が鳴り響いた。
はれ? と振り返る。
「おーおーあーたーりー」
『すげぇ! 何普通に当ててんすか!?』
「一等。ペア日帰り海旅行でこざいまーす!」
「いや…、まさかな」
完全に予想外。青天の霹靂とでも言うのだろうか。多分違うが、そういう言葉を使うくらいなのだ。
智樹達を見てみれば、二人(主にそはら)は固まっていた。
「ん?」
それに気付いた守形はそう言うしかなかった。
そして再び、
「おーおーあーたーりー」
一等が当たった。何なのか分からない。ギャグなのだろうか。というか、一等は一体何個あるのだろう。
しかし、守形と天神。この二人が連続で当たった理由はむしろわかりやすい。単純に確率が高くなっていただけ。
その原因を作ったのは、外ならぬそはらだ。そはらは余りにも多くの抽選券を使った。まぁ、それだけなのだが。
「………、」
そはらの視線が痛い。いや、気のせいかもしれない。だからこそ、言わせてもらおう。
『ん?』 「ん?」
この時、天神と守形の息は一寸のぶれなく合わさった。