Heaven's Lost Property
□Liar_Angel
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蒼い空。
白い雲。
色の無い平原。
吹き抜ける柔らかな風。
『………へぇ〜。ここは、なんも変わんねぇんだな』
ここは夢だ。いつも見ていた夢の中だ。
日常生活があまりにも変わってきた天神にとって、なんとなく今は変わらないものが愛しくも感じる。
臭い台詞だが、変わらない友情。これもまた愛しく感じるのだ。
まぁ変化は大好きだ。堂々巡りの日常は嫌いだし。
「―――久しぶりだな、少年」
声がかかる。そちらを向くと、いつもの男がいた。
『やっぱり……。この夢見るとお前が出て来るんだな』
「なに言ってんだ? あたりまえだろうが。ここは、"不本意"だが俺とお前の世界だからな」
『訳わかんねぇ……』
天神はそう言うと、遠く地平線の彼方を眺めた。不思議な光景だ。色が無い景色と、綺麗すぎる景色が折り合う。要は二つの境界線なのだから。
「―――どうだ? 日常というものは案外脆く、簡単に崩れ落ちただろ?」
『………、日常が脆かったのか、それとも破壊材料が強かったのか、計りかねるんだけど…』
その答えが可笑しかったのか、男はクスクスと笑った。
誰でも、自分の答えを笑われれば、少なくともいい気はしない。天神は、少しだけ批難めいた視線を男に送る。
「悪い悪い。ついつい可笑しく―――………」
『?』
急に止まった男の口。それを不思議に思った天神は首を傾げる。
「――……どうやら気付かれたらしい」
『気付かれた? 何に?』
「 だ」
ますます天神は首を傾げた。
「わからないか? わからないよな。まぁいい。とりあえず気をつけた方が身のためだな」
『はぁ!? どういう事だよ!』
そして世界は明滅し、深い暗闇の中へ沈んでいく。
――*――