Heaven's Lost Property

□The_Homework
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――*――



誰が見ても立派だと言わざるを得ない家。その前に天神達は来ていた。ちなみに、表札には「守形」と刻まれている。



電話帳やら何やらで調べた結果。守形と言う家はここしかなかった。しかし、英四郎という子供はいないらしい。



「連絡先わかんないしなぁ。携帯だって非通知だったしぃ」



『………あの日、この番号誰かな? なんて思ったけどさ……。恥ずかしい事に、焦ってたらしく「非通知」が番号に見えてたらしいんだよな』



「それは……、ちょっと。フォローできないかも」



『いや、焦ってたんだね。でいいじゃねぇか………』




どうしようか……、と四人で悩んでいると(イカロスは蝶々を追いかけまわしている)、




「あら? 見月さんじゃない……?」




優雅。そんな雰囲気がにおう言い方であった。



声の主は、天神達の通う学校の生徒会長。五月田根美香子。




「あ、会長!」


「生徒会長チワーッス!!」


『ども』


「こんにちは♪」



それぞれが違った挨拶をする。



「………今日は、ダブルデート?」



「「違いマス」」



「だってさ、いっくん」


『ん〜……』



そはらと智樹がガッツリ反応するなか、春原は何てことなくあしらい、天神は完全に興味がないらしい。




「春原さんと天神君は今でも一緒におフロに入ってるって本当?」



『どんな情報だよ…』


「さすがにありえないね…」



「春原さんの下着を天神君が選んでるって話は?」



『バカみてぇな話だな…』


「どこ情報なのかなぁ?」



しかしこの二人、やけに冷静である。天神も春原も、常識的に考えてまず無い話の相手をするほど、子供ではないだけなのだが。



「この間ノーパンで手錠させられてる見月さんを見たんだけど」



「いや……、あの……」



「会長まだそういうの早いと思うわ―――」



「すんません。謝りますんで勘弁してください」



夏の日差しによるものだけではない。明らかに焦りから智樹は汗をかいていた。




「―――で? 守形くん見つかった?」




「わかってんなら変な小芝居はさまないで下さい」



そんなやり取りを他人事のよいに見た天神と春原は思った。



((この人タチ悪い))



去り際に会長は、ロープレのモブのように言い残していった。



「河原に行ってごらんなさい。そこに守形くんの『家』があるから」






――*――




空美町だからこその風景。山に囲まれ、川は澄み渡り、日光を反射して煌めいていた。



魚が見えるほどの川に、一人の男が足を入れていた。



男は微動だにしない。その姿はさながら、獲物を狩る機会を待つ野生動物のよう。



その男の足元に魚が近づく。
次の瞬間。
バシャッ! 男の銛が魚を貫いた。見事なまでの腕前だ。



彼は焚火へと近づくと、木で作った串を魚にぶっ刺して焼き始めた。



焚火の近くにはテントが張られており、何故か表札が掛けられていた。














『守形』。














「『家』か。これ『家』なのか」



『………、くっ』




天神はこういうのが大好きだ。今も右手の甲を口につけながら肩を震わせている。



当の本人はと言うと、上半身裸でモシャモシャと焼き魚を食べている。




「守形先輩。もしかしてここから学校に来てるとか?」



「そうだが?」




守形はそれがさも当然かのように答えた。この男にとってみれば確かに当然だろう。だが、一般的な目で見ていただきたい。どこにサバイバル生活を何の気無しにしながら学校に来る人がいるだろうか。




「もうツッコむ気も起きん………」


『この人本当ハイスペックだな、おい』


「いっくん。世の中は広いんだぜぃ」


『……誰のマネだよ』



「ようこそ我が家へ」



そう言って頭を下げる守形に、イカロスとそはらの二人も同じように頭を下げた。





――*――

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