Heaven's Lost Property
□Peaceful_day...?
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――*――
『おいおい………。俺は随分とまた、変にファンシーな世界に迷い込んだみたいだ』
「ファンシー……ですか?」
『うん。あっ、お前は天使だとすると俺はなに?』
「? マスターはマスターじゃないのですか?」
『あっ、そっか。俺ってマスターじゃん。あははははは、マスターって何すんだろ。あははははは』
「変な話してんじゃねぇ! ここはリアルだぞ!?」
『お前―――』天神は智樹の周囲を見て言う。
『どこの世界に「パンツが飛んでるリアル」がありますか…? 俺はこれがリアルだったら困っちゃうわ』
―――前前前前回のあらすじ。
智樹がイカロスのカードを使ったら、そはらのパンツが飛んでった。
かなりたくさん飛んでった。
今回それが戻ってきたご様子。
なんなのこれ、と天神はチュンチュンと鳴いているパンツを指差しながらイカロスに聞く。
「わかりません。渡り鳥のような…ものなねでしょうか…。こう…ぐるっと地球を一周して……」
イカロスは人差し指を伸ばして、目の前でくるっと円を描きながら言う。
「ぐるっとって……」
『結局、分からず終いかよ』
天神は飛んでるパンツを見ながら言う。そして、ここまで見てて恥ずかしくないパンツなんてない、そんなことを思う。まぁそれが普通の反応だ、夢にだってこんな光景は出たりしない。
「もしかしたら…、智樹さんに会いたくて……、戻ってきたのかも…」
だとすれば感動的ではないか。それを智樹も思ったのか、小鳥と戯れるかの如くパンツ達に手を向ける。
―――――お前たち
―――――ダメだ今すぐここから離れないと
そはらの十八番、殺人チョップが智樹の脳天にクリーンヒットして、虫けらのように潰される。
そして次々とパンツ達が打ち落とされていく。
よく見れば破れてしまったのもあった。あれは即死だろうに。
やめてくれ〜、と智樹が弱々しくそはらに縋り付く。
さすがの天神も、これは酷くないか? と思っていたのだが、決して口には出さない。「触らぬ神に祟りなし」だ。
そはらの殲滅は終わらない。逆にヒートアップしていく。
――*――
「えぐっ、ひぐっ」
部屋には智樹の泣き声がこだましていた。
智樹を慕い(多分)、遠路はるばるやってきたパンツ達は、見るも無惨な状態で飛ぶ事を止めていた。ピクリとも動かない(それが普通なのだが)パンツたちには悲壮感だけがにおってくる。
「なんて…っ、なんてひどいことをっっ……」
「いえ、智樹さん? これは単にカードの効力が切れただけで」
『……鬼畜め。鬼畜変態バカボインめ……』
「いえ、ですから――」
天神までもが毒されてしまったみたいだ。彼は聞こえないような絶妙な音量でそはらを攻め立てる。
「とにかく……、ちゃんと全部捨てといてよね」
振り向きながら智樹に釘を刺す。
「おう。まかせとけ!!」
アホすぎる。コイツは何故ここまでバカなのだろう、と天神はちょっと真剣に考える。そして止めた。殺られるとわかりながら、親指を立ててパンツを被ってるヤツに常識が通用するはずがない。
そして案の定、そはらの殺人チョップの下に智樹は沈んだ。
「捨てといてよね?」
「……………………ハイ………………」
(今いち信用できないな……)
(って考えてるなアイツ……。バカか、普通に考えてみろ。智樹の事だ……、捨てるはずがないね)
そしてそはらは何かを思い出したのか、イカロスの下へと近づいていく。
天神はなんとなく想像がついたのだが、いつもながらの嫌な予感もセットでついて来た。
(パソコンのデータ、全部ガイアに移しとこ……。本当に嫌な予感しかしねぇ……)
――*――