落乱(小説)

□家族
1ページ/5ページ

「きり丸も、来年には卒業か…」
早いものだな
と きり丸の前に座るこの店の主人が言った
「ここに来た時はあんなに小ちゃかったのに、6年でこんなに大きくなって」
今言ったのは女将さん

この店にバイトしに来たのは学園に入学してすぐ
それから、週に3日、4日はバイトで来てる
おかげで可愛いがってもらってる
最近では、会計とか大事な仕事も任されるようにもなり信頼されているのが分かる
最初は信頼されている事に戸惑いむずむずした感情があった(後にむずむずの正体は、嬉しいっていう事だと気付いたけど) 今でも、少し馴れないけど 正直ありがたい
「また今日もこれからどこかで仕事するのかい?」
「はい、これから茶店に行って終わったら 犬の散歩 それから…」
とこれからの予定を教える
昔より手早くなり仕事も軽くこなせるようになったので今は誰かに手伝ってもらうような事はあまりない。(休みで先生の家にいる時は甘えて手伝ってもらったりはするが。)
「お前、そんなに働くても今は大丈夫だろうに…」
「貯えはたくさんあった方がいいっすから」
とにこっと笑顔でいうと
そうか…と困ったような笑顔になる
「きりちゃん、大福もう一個どう?」
「いや、そろそろ行かないとだから。また今度に」
じゃあ、お土産に持っていきなさいと2つくれた
「ありがとうございます」ぺこっとお辞儀して受け取る。店を出ようと腰をあげようとすると
「きり丸、ちょっと話しがあるんだが」
と旦那さんに声をかけられた
「はい?」
「お前、うちの子供にならないか?」
「ひぁぃ…」
突然の言葉に思考が追い付かず間抜けな声が出た
「もし、きりちゃんが良ければで良いのよ!ほら、私達子供いないでしょ!だから、きりちゃんがうちに来てくれたら凄く嬉しいし。」
「昔からお前を見てきたがお前くらい仕事のできるやつはそうはいねぇ!俺も女房もお前の事は昔から自分の子供のようでな」
と二人は嬉しそうに話す
「あの、でも…」
「返事は急がないから!考えてみてちょうだいな」

そこから、どうやって仕事をこなしたかあまり覚えていない
失敗はもちろんないが、ほとんど心ここにあらずだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ