落乱(小説)

□好きだから…
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「先輩、遅いですよ」
慌てて走って来た先輩…善法寺伊作に言った
が、その伊作を見ると どこかで転んだのか顔に擦り傷が出来ていた
「待たせちゃってごめんね、きり丸。」
「…どっかで転んだんですか?」
伊作は不運な生徒が集まるという保健委員会(別名:不運委員会)で6年活動し現在は委員長まで務める自他共に認める筋金入りの不運少年である。
「来る途中に穴があって落ちちゃって…流石にそのままの格好では来れないから慌てて着替えて来たんだけど」
手を合わせて謝る伊作に、怒られてシュンとなった子犬が重なった。
「もう怒ってないです。ちょっと、かがんでください」
「ん?」
伊作が かがむと 近くの水場で濡らしてきた布で伊作の顔を拭う。
「まだ泥が付いてました。男前が、台無しですよ…」
「ありがと♪」
優しい笑顔を向けられるときり丸は自分の顔が熱くなっていくのを感じ、悟られまいと顔を反らした。
ありがとう という言葉を言われるのはどうにも慣れない。しかも、目の前にいるのは最上級生であり下級生からの絶大な人気を誇る先輩である。…ただ、残念な事に本人にその自覚はないが。
「それじゃ、行こうか」
「はぁい」
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