落乱(小説)

□雨の日
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「はぁ…」
「どうしたの、きり丸。もしかして雨は嫌い?」
内職をしながらため息をつくきり丸に手伝っていた伊作が声をかける
「ぁ、伊作先輩!手は動かしながら喋ってくださいね」
「厳しいね…」
「僕の学費と生活費の為ですから」
普通ならば手伝っているのにも関わらずこんな事を言われればムッとしてやる気すらなくなるところだが、伊作はニコニコと「それなら、もっと頑張らないといけないね」と言って再び手を動かし始める。
(きり丸と一緒にいれるのは楽しいし何よりきり丸が喜んでくれるのが一番嬉しいんだよね)
惚れた弱みというやつである。
「まぁ、雨降ってると外行って仕事も貰いに行けないですからね。内職も良いですけど稼ぎが良いのはやっぱり外でやる仕事ですから」
「きり丸は物売りが上手いもんね」
「銭儲けの事なら任せといてください♪伊作先輩は雨なのにさっきから嬉しそうですけど、雨が好きなんすか?」
手は止めずに伊作は何かを思い出すように少し間をおいてから懐かしむように口を開いた
「雨の日は特別な思い出があるんだ…」
「特別な思い出…そういわれると気になりますね」
「内緒♪」
「ちぇっ、残念」
唇を尖らせるきり丸の頭を伊作が撫でてやると きり丸は照れくさそうに笑った(きり丸は忘れてるかも知れないけど。僕ときり丸が初めてあったのが雨の日だったから…)
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