落乱(小説)

□記憶
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「三郎先輩は何でいつも雷蔵先輩に変装してるんすか?」
今、私が居るのは図書室のカウンターの中だったりする。学級委員長委員会の私が何故、図書当番をしているかと言えば雷蔵が風邪で寝込んだ為の代役だ。
そして、先ほどの質問をしてきたのは1年は組図書委員の きり丸である。
「雷蔵が好きだから」
「ぁあ、うん。分かります」
(驚きも何もないなんて…そんな普通に返されてしまうと、かなり期待を裏切られた気分になるんだが…)ガッカリしていると きり丸が困ったように三郎の頭を撫でる
「で…三郎先輩、この態勢恥ずかしいんですけど。そろそろ降ろしてくれませんかね」
この態勢というのは、実は先ほどから きり丸は三郎に抱き抱えられるように座っているのだ。
「私は恥ずかしくない」
「いや、僕が恥ずかしいんです…」
渋々と三郎はきり丸を自由にする。座っていたところがぽかんと空き 何となく物足りない。
「…寒い」
不満たっぷりにきり丸を見ると きり丸は三郎と視線を合わせないように仕事に集中する。
きり丸が全く構わないので暇な三郎は身体を伸ばして大きな欠伸をする。それを見たきり丸は三郎に
「代役でも、しっかり今日のノルマこなさないと中在家先輩に怒られますよ」
きっちり釘を刺すのも忘れない
「夜も借りにくる物好きなんて、あまりい…」
ドンッ!
言い終わらない内に、きり丸が三郎の前に山となっている書類を置く
「仕事はこんなにあるんです!さすがに僕一人じゃ終わらないですから一緒にやっていただきます」
「ん〜、それじゃあ これをやったらまた、きり丸を抱っこさせるなら頑張ろう!」
「…分かりました」
もう、この先輩に何を言っても無駄であることを経験上知っているので、きり丸は仕方なく了承した。
とりあえず三郎は、気持ちを切り替え(この書類さえ終わらせれば、きり丸とのんびりできる!)という思いで目にも止まらぬ速さでこなしていった。
何事もやる気さえ出せば何でも出来る子なのである。
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