落乱(小説)

□僕のそばにいてほしい
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「きり丸、休みはどうするの?」
「子守のバイトに散歩に とりあえず、バイト三昧だなぁ」
きり丸は、戦で身寄りがなく学費などすべてを自分の稼ぎで賄っている。 まだ僕と同じ十歳なのに、凄いやつだ。
「そうじゃなくて、休みはどこにいるの?学園にいるの?」
「そうするつもり。休みでも上級生がいるから長屋も自由に使っていいらしいから」
「そ、それならさ!!!」
「?」
猫のように可愛らしい目でこちらを見てくるきり丸を見てドキドキした。 僕のうちは馬借をやっているし、きり丸一人が増えてもなんということはな い。
むしろ、父ちゃんのことだから喜んでくれるだろう。
それに、うちにくれば きり丸に馬借の仕事をアルバイトしてもらえばいい。
そうしたら、ずっと一緒にいられる。
「どうしたんだよ、団蔵?」
「あ、あのさ・・・休みなんだけど もし学園にいるなら」
「きり丸、休みはこれからうちに来なさい」
「「ぇ・・・?」」
勇気を振り絞って言葉にしようとしたところでどこで聞いていたのか土井先生がきた。
「お前は、放っておくとどんなバイトをするか分からないからな。心配だから、休みは私のうちにきなさい」
「あ、あの、でも、バイトして稼がないといけないですし!先生のとこ行っても色々迷惑かけると思うからっ」
きり丸が、全部を言い終わらないうちに土井先生がきり丸の頭をぽんぽんと叩いた
「私も独り身だから、そんなに気にすることはないぞ。それに、私もできる事なら手伝うからそんなに何でも一人でやろうとするな。たまには、大人を頼るということを覚えなさい」
「、、、はい。ありがとうございます」
そういった、きり丸の顔は真っ赤になって目には涙が浮かんでいた。







「あれからだよなぁ、土井先生ときり丸が近くなったのって。」
あの時は、きり丸の表情を見て土井先生の家へ行く事になったなら良かったって思ったけど。
今でも思う。あの時、きり丸が俺の家へくることになっていたらもっと何か違っていたんじゃないかと。
「団蔵!鬼ごっこしようぜ」
それでも、今こうして君と一緒にそばにいる。
スタートは少し出遅れたけど、まだまだ先は長い。
これから、誰よりも近くに行ってやる
「今日は負けないからね!」

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