落乱(小説)

□雨の日
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「おい、伊作!先行ってるぞ」
「雨だけど、まだ戻らないの?」
「うーん、晩御飯には間に合うように帰るよ。」
「風邪引くなよ、気を付けてなー」
「ありがとう♪」
今日の授業は四年生は合戦場へと来ていた。午後から今日は休みという事もあり授業が終わると同級生達は足早に帰っていった。
ただ一人、善法寺伊作を残して…
「保健委員として、怪我をした人を放っておく事はできないもん!」
怪我人を見つけては手際よく処置していく。すると背後から気配がし振り向くとそこには小さな子供がいた。だが、油断をしてはいけないだろう。ここは合戦場であり普通の子供がいるような場所ではない。
「あんた…何で敵味方関係なく手当てしてんの?何の得もないじゃん」
子供は伊作を警戒しているのか伊作を見る目は鋭い。そして子供とは思えないような気配を纏っている。だが、伊作には少年がそこまで危険には見えなかった。
「うーん…怪我をしてる人を放ってはおけないからね。」
「早死にするタイプだね」「あはは。よく言われる」「あんたみたいな能天気そうな人間て見てると苛々する」
そういって少年はその場から立ち去ろうとするが、伊作に腕を掴まれその場から動けなくなった。振りほどこうとしても、力の差は歴然でそれも適わない。
「ねぇ、足怪我してるでしょ。手当てするから」
「親切の押し売りなんて迷惑なだけなんだよ。…それとも、そんなに親切なのってもしかして俺と寝たいから?」
少年が言わんとしている事は何となく察したが 雨の当たらないところへ移動し構わず足を見ることにした。
「足、捻挫してるね。こんなに腫れて…。痛いでしょ」
「痛いなんて感覚忘れたよ。そんな事考えてたらここでは生きていけないよ…」
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