novel T

□穏やかに、育まれるもの2
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リキッドからバレンタインにチョコレートを貰ってから1ケ月。
土方は何を返そうかと悩んでいた。
本来なら自分も手作りの物をあげたいが、なにせ『男子厨房に近寄らず』で育った為、それは出来ない。
しかし義理とはいえ大好きな人から貰ったのだ。
ただ物を買って渡すだけなんてしたくない。

「ん〜…」
「トシ、何を悩んでいるのだ?」

いそいそとお菓子を作りに励んでいる近藤が近づく。
それを横目で見た土方は溜息をついた。

「オメェはいいよな。料理できて」
「あん?」
「はぁ〜、どうすっかなぁ」

煙草の煙りを燻らせて天井を見上げる。
どうやったらリキッドを喜ばせる事ができるだろうか。

「…ははぁ。さてはおヌシ、リキッド君へのお返しに悩んでるのだな」

ズバリ、といった感じで指を差されて、土方は言葉に詰まった。

「そうかそうか。うんうん。大好きな人へのプレゼントは悩むよなぁ。ワシだってソージに何をあげようか考えこんだからな」
「…オメェ、バレンタインにソージから貰ってたっけか?」
「ワシはいつだってソージからの大きな愛を…」
「みね打ち三段突き」
「うわお〜っ!コレだよコレ〜v」
「僕の居ない所で勝手な事を言わないで下さい」

またしても部屋が血の海で染まる。
いつものごとく始まった二人の痴話喧嘩に、土方は呆れながらも少し羨ましいとさえ思った。

(近藤さんはストレートに言えんだもんな…)

そしてなんだかんだ言いながらも沖田もそれを受入れている。
恋愛に奥手な自分にはとうていできないマネだ。
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