STORY's LINK
□君の幻影
3ページ/6ページ
何も不思議なことはない。
自分のやりたいことをしている。
満足している。
…そのはずなのに。
(……何なんだ…)
何かが満たされない。
満足なはずなのに、心のどこかで足りない、と嘆いている。
だが何が足りない?
分からない。
満たされていない、その空白が分からない。
「…俺は…」
そう呟いてから、烈火を思わせる真っ赤な髪をかきあげ、椅子の背もたれに身を預ける。
「……何が、」
ため息を吐き出す。
いつからだろう。
こんなことになったのは。
何かが自分の中で壊れたのは。
女を抱いて、酒を飲んで、好きなことをする。
これほど欲求を満たすものはないはずなのに。
喪失感。
虚無感。
.