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□君の幻影
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何も不思議なことはない。

自分のやりたいことをしている。

満足している。


…そのはずなのに。





(……何なんだ…)





何かが満たされない。

満足なはずなのに、心のどこかで足りない、と嘆いている。

だが何が足りない?


分からない。


満たされていない、その空白が分からない。


「…俺は…」


そう呟いてから、烈火を思わせる真っ赤な髪をかきあげ、椅子の背もたれに身を預ける。


「……何が、」


ため息を吐き出す。


いつからだろう。


こんなことになったのは。



何かが自分の中で壊れたのは。


女を抱いて、酒を飲んで、好きなことをする。



これほど欲求を満たすものはないはずなのに。



喪失感。



虚無感。



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