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□メイア奮闘記
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「嬢ちゃん、悪いがトゥラをもう少し切って混ぜてくれねぇか?ちょっくら薪を割りに行ってくるからよ。」
「分かりました。」
エッツォが怪我をして療養している間、何もしないのは気が引けるというので、メイアが家事を手伝うことになった。そして与えられた記念すべき最初の仕事がこれ。
トゥラを切ってそれを鍋の中に追加して混ぜるということだった。今鍋の中に入っているのはトゥラスープと呼ばれるもの。
材料はトゥラという唐辛子のような形をした薬味。それをトマトと一緒に煮込み、スープにしたものだ。
トゥラは薬草の一種でもあるので、エッツォのためにとおじさんがこしらえてくれたものだ。メイアは食べたことは無かったが、先ほどおじさんに味見をさせられた。
なんというか独特の味で、トマトともトゥラの味とも言えぬ、不思議な味がした。元々薬草スープのような感覚のものらしいので、仕方がないのだが。
メイアはゴソゴソとトゥラを取り出すと、まな板の上にそれを乗せた。唐辛子のような外見をしたそれを、細かく刻まなければならない。
「……」
メイアは腕につけていたゴムを取り出すと、それで髪を後ろで1つにまとめて包丁を握る。
「…いきます。」
誰に対していっているのかは知らないが、そう呟くと、包丁を宙高く振り上げた。そしてそのまま重力に任せてまな板にあるトゥラめがけて振り下ろす。
ダンッ!!!!!!!
とても料理をしているとは思えない音が、キッチンに響く。しかもかなりの高さから振り下ろすので、狙いが定まらず、トゥラの端っこに当たって残りが吹っ飛んでいってしまった。
「……」
落ちたトゥラを拾い上げるとそれを水で洗い、再びまな板の上に乗せて先ほどと同じ行動を繰り返す。…おかしい。メイアは包丁を止めた。
なかなか細かく刻むことができないではないか。しかし自分のその切り方がいけないのだということに、メイアは気づかない。
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