名もなきお伽話 文
□退却
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「…お前が第1石『輪廻』の適合者……!?」
沈黙が続く中、
それを破ったのは俺の言葉だった。
「神と同じく‘不死’を持つ―――……
……神を最も憎む人間。
そしてレイラ様の‘敵’。」
―ピくっ………―
…アベルの体が小さく跳ねる。
それもそうだ。
アベルも俺もレイラ様を慕い、尊敬している人間なのだから。
俺達の目の前に居るのは
俺らと同じくラルトの宝石の適合者でありながら、
唯一レイラ様を憎み、
残っている歴史の中でも幾度となくレイラ様を殺そうとした、
ラルトの宝石の適合者の中でも
最凶最悪の長年の適合者。
俺の体に力が入る。
俺の手が千歳の柔らかい肌に少し食い込む。
千歳が小さく唸った。
「……さあ、千歳様を返して頂きましょうか。」
―ジリっ………―
俺達に一歩、白蓮という男が近づく。
「……っ………。」
「…………。」
一歩後ずさりする俺達。
いつ千歳があの男に連れて行かれるかも分からない状況下の中、
俺は千歳を渡すまいと
更に力を込めて千歳を抱きしめた。抱き寄せた。