名もなきお伽話 文

□全ての元凶、理解、解明
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―少し時はさかのぼり、―


「っアカネ!!!」


―バン!!―


自室の扉が勢いよく開く。


「……なんなのよ、アベル。」


書類から目を離し、室内に入ってきたアベルに

視線を向ける私。


「大変なんだ!

 千歳ちゃんが目を覚ましたんだよ!!」

「っあの子が!?」


ガタンと勢いよく立ちあがる私。


そう、千歳という女の子は数日前に、

この城へと運ばれてきた女の子の事。

その子を初めて見た時の事を私はよく覚えている。


色素の薄い、茶色をした髪を長くのばし、

白くて陶磁器の様に滑らかな肌をし、

目鼻立ちは整い

瞳の上にのっている瞼の先についているまつ毛は

女の子らしく、とても長かった。




私は一種の芸術品を見ているんじゃないかという様な錯覚を感じ、

その子の美しさに魅せられてしまった。




それはたまたまその場に居合わせていた家臣や、

召使や軍人も魅せられてしまったらしく、






そして運んできた張本人達は、もう

とっくに魅せられてしまっていた後だった。








私達は身分など関係なしに

その子の身を案じ、部屋を手配し、


いつの間にかその子に心酔していた。



「もしもし!

 少女Aが目を覚ましたわ!

 至急医療班を1つその子の部屋にむかわせて頂戴!!」


すぐ傍にあった電話に手を伸ばし、

城に元々居る医療班らに電話をかける私。

受話器を放りなげる様にして

私は受話器から手を離し、

急いでその子の部屋にアベルとむかった。


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