名もなきお伽話 文

□契約
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「…な……、

 …何言ってるの?リン………、」

「……。」


…リンは片膝を床についたまま、

ただ何も言わずに黙っている。


「今までリンはレイラ様の為に

 騎士団で戦ってきたんじゃないの!?

 いくらレイラ様の命令だからって、

 そんなに簡単に私に仕えるだなんて言っちゃ―――」

「……違うんですアリス様……。」

「――……え……?」


「…私は別に

 レイラ様の命だからアリス様に仕える、

 という訳ではありません。」


「………へ?」

「………ほぉ?」


私の呆気にとられている声と、

レイラ様の意味深な声が重なる。


「…あっちっ違いますよ王!

 私は別に王に反抗しているとかそう意味ではなくて

 えっとそのあのえっと……、」


レイラ様の意味深な声に気付いたのか、

あたふたとするリン。


「…大丈夫よリン、

 誰もリンのレイラ様に対する忠誠心を疑ってないから。」


そんなリンの様子を見かねたアカネが

そっと声をかける。


「…ねえリン、

 レイラ様の命令だから私に仕えるとか

 そういう訳じゃあないって言ってたけど、

 じゃあどういう訳で

 リンは私に仕えるって言ったの?」


私の視線とリンの視線が絡まる。

リンは静かに口を開いた。


「…初めてなんです、この気持ち。」

「……?」


「初めてなんです、

 自らこの方に仕えたいう思うこの気持ちが。」


「……!!」

「私は今まで誰かの命令で様々な主に仕えてきました。

 そんなんだから、

 どの主も私には全く合わない思考の持ち主だったり

 酷い性格の持ち主だったり、

 痛い目に合ってきた事は数多くあります。

 …でも、」


そう言うと、

リンはより一層強い意志の持った瞳で

私の事を見た。


「アリス様は違う、今まで見てきた方とはどこか違う。

 私の様な女騎士にも優しく接し、

 心のこもった笑みを見せたのは、

 …貴方様が初めて。

 だから私はそんな貴方様に心から仕えたい!

 誰かの命令とかそういうのではなく、


 自分の意志で。」


「……リン……。」



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